省人化やコスト削減、業務効率化や生産性向上などを背景に、製造業DXが推進されるようになりました。製造業DXの推進に有効な手段として、多くの企業で活用が進められているのがクラウドサービスです。
本記事では、製造業企業におけるクラウド導入の現状や、活用されているクラウドの種類、メリット、導入方法や手順を解説します。すでにクラウド導入を成功させた製造業企業の事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
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製造業におけるクラウド活用の現状
以下は、総務省の「令和5年通信利用動向調査」です。調査によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は年々増加傾向にあります。
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また、産業別でのクラウドサービスの利用状況を見ると、製造業は調査対象全体の79.2%がクラウドサービスを利用しているという結果になり、前年の71.6%よりも増加しました。
ただしもっともクラウドサービス利用状況の高い情報通信業の93.4%、次ぐ金融・保険業の89.9%、不動産業の89.7%などと比較すると、製造業のクラウド活用は進められているものの、他の産業に比べると遅れ気味であることも分かります。
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製造業でクラウドが推進される理由と背景

クラウドサービスは多くの産業・分野にて活用が拡大している傾向にありますが、特に製造業はクラウドサービスによる恩恵を多く受けやすい産業と言われています。
製造業でクラウドサービスの利活用が推進されるおもな理由を解説します。
データの利活用の効率化
製造業における生産性向上を目的に、データの収集・分析・活用を進める動きが活発化しています。
製造業では、データの分析や活用によって、以下の課題解決につながることが期待されています。
・技術者の高齢化による技術継承やノウハウの蓄積の難しさ | ・人手不足
収集したデータはサーバーに蓄積されますが、オンプレミス型の物理サーバーの場合、サーバー容量が足りなくなるたびに拡張をしなければいけないため、時間とコストが多くかかってしまいます。また、時間がかかることでデータ収集と分析の効率の低下も懸念されています。
クラウドなら必要に応じてすぐに容量を追加可能、さらに利用した分だけ料金が発生する従量課金制を採用しているサービスが一般的のため、コストを抑えながら効率的なデータ分析・活用が可能です。

製造業DXの推進
近年、国策として経済産業省がDXを推進しています。
製造業でも、業務の効率化や生産性の向上を目的に、AIやIoTなどのテクノロジーや、産業用や共同ロボットなどの導入をはじめとした、製造業DXへの取り組みを進める企業も多くなりました。
製造業DXを推進する上で必須となるのが、柔軟性の高いシステムの構築です。
クラウドサービスは新機能の追加やアップデートも早く、ユーザーは常に最新機能を利用できる柔軟性の高さを持っていることから、製造業DX推進の一環として、クラウドの導入は有効と言えるでしょう。

製造業で活用されるクラウドサービスの種類

現在、さまざまな業務で活用される多様なクラウドサービスが誕生しています。
ここでは、おもに製造業で利活用されているクラウドサービスの種類と特徴を順に解説します。
生産管理システム
生産管理システムとは、生産管理業務の効率化のためのシステムです。
生産管理システムには、以下のような資材や生産情報を管理する機能があります。
・生産計画 ・購買管理 ・在庫管理 ・製造管理 ・出荷管理 | ・販売管理
従来の生産管理システムは、ソフトウェアを企業内のサーバーで運用することが多く、社外での情報の利活用や閲覧などが難しいケースがありました。
クラウドサービスを活用した生産管理システムなら、インターネット環境、かつ権限を持ったユーザーであればいつでもどこでもアクセスできます。
紙やエクセルなどで生産管理を行っていた場合も、クラウド化することでヒューマンエラーの防止や、業務全体のスピードと精度向上にもつなげられるでしょう。
工程管理システム
生産に関わる労働力、資材や原料、設備、機械などの工程管理を行うシステムです。生産管理システムと同じく、工程管理システムをクラウド化することでいつでもどこでも工程状況の情報共有が可能になります。
設備保全システム(CMMS)
設備保全システムとは、工場における点検作業・メンテナンス作業の実施状況や点検項目の状況を記録するシステムです。CMMS(Computerized Maintenance Management System)とも呼ばれます。
設備保全を未然に行うことで、機器のトラブルを防ぎ、稼働率を維持できます。そのため、製造業における設備保全は、稼働率に大きく影響する重要な作業と言えます。
従来は紙面での設備保全状況や点検項目の記録、現場で設備の状況確認を行うケースが多く、データの紛失や従業員の点検業務負担の増加といった課題がありました。クラウドサービスを導入することで、点検の自動化やデータの長期保存が可能となり、設備保全業務の精度と効率向上が期待できます。

基幹システム(ERP)
基幹システムとは、企業の基幹業務を統合管理できるシステムです。ERP(Enterprise Resource Planning)システムとも呼ばれています。
以下のような複数業務を一元化することで、各部門間のデータのやり取りや連携が円滑になります。
・人事管理 ・生産管理 ・物流管理 ・販売管理 | ・会計管理
クラウド環境で構築した基幹システムを導入することで、リアルタイムで各部門での情報共有ができるため、経営層の意思決定や全社的な視点での経営判断のスピードアップにも有効です。
SCMシステム
SCMとはサプライチェーンマネジメントシステムの略です。供給元から最終顧客までの製品の流れ(サプライチェーン)を管理し、業務プロセス全体の最適化を目的としたシステムを指します。
システムの特徴は生産管理システムと似ていますが、生産管理システムは工場内部の製造工程の管理、SCMシステムはサプライチェーン全体を管理と管理対象が異なります。そのため生産管理システムで管理している対象は、SCMシステムで管理する範囲(サプライチェーン)の一部に含まれていることになります。
SCMシステムは、以下のようなメリットがあり、競合他社と区別をすることによる企業全体の優位性や競争力の向上が期待できます。
・リードタイムの短縮 ・コスト削減 | ・在庫の最適化
品質管理マネジメントシステム(QMS)
品質管理マネジメントシステムとは、製造業企業が提供する製品やサービスの品質の継続的な改善を目的としたシステムです。
品質管理マネジメントシステムは、ISO9001をはじめとした規格に沿って、品質管理工程が正しく運用されているかを判断します。
手順書作成ツール
手順書作成ツールとは、業務や作業の手順を簡単にまとめて文書化できるソフトウェアです。

紙のマニュアルだけでなく、動画マニュアルも作成できるため、短時間で高品質なマニュアルを作成できます。教育対象者は視覚的に業務や作業手順を理解しやすくなり、教育効果の高いマニュアル作成につながるでしょう。
現場帳簿電子化システム
現場帳票電子化システムとは、製造日報や点検票といった現場で使用する帳簿類を電子化できるシステムやツールのことです。
現場帳票電子化システムによって、煩雑になりやすい紙媒体の帳票の管理を効率化できます。

必要な情報をすぐに引き出せる検索機能搭載のものや、生産現場でも使いやすいスマホやタブレット対応の製品もあります。
IoT
IoT(Internet of Things)とはあらゆるモノとインターネットをつなげた仕組みのことです。
製造業では、機械や設備にセンサーを取り付けて、温度、振動、圧力などのデータをリアルタイムで収集でき、収集したデータをインターネットを介して使用することで、例えば以下のように活用されます。
・生産ラインの効率の最適化 ・異常検知に対する即日対応 | ・設備の故障予測
クラウドで保存、分析することで、収集した膨大なデータを効率よく活用することができます。
製造業のクラウド化におけるメリットと課題

製造業でクラウドを導入することで得られるメリット課題を解説します。
製造業のクラウド化におけるメリット
製造業におけるクラウド化には、以下のようなメリットがあります。
コスト削減

クラウドはオンプレミスのように、自社で物理的なサーバーやシステムの環境を構築する必要がありません。
また、サーバーの運用や保守運用のための人件費も不要となるため、システム構築の初期費用や運用費用などを抑えられます。
利用する分のみを支払うシステム(従量課金制)のクラウドが多く、一定期間使用後にクラウドの成果を評価し、サービスの継続を決定するか他のサービスを検討する、といったことも可能です。
どこでもアクセス、情報共有が可能になる

クラウドはインターネット環境さえあればどこにいても利用できます。
そのため、リモートワークやオフィス、工場といった拠点間での情報共有が簡単にできるようになることも大きなメリットです。出社や拠点間移動をしなくてもデータの閲覧や利用ができるようになるため、リモートワークで業務を進めることもできます。
拡張性が高い

クラウドは、ストレージの増設やデータの移行を簡単に行える拡張性の高さも魅力です。
オンプレミスは容量の増減を自社で行う必要があるため、手間やコスト、人員が必要です。
クラウドなら、契約しているサービス提供会社へ容量やプランの変更手続きを行うだけで、必要に応じてすぐに容量増減ができます。
老朽化や故障によるトラブルがない

オンプレミス環境でデータの保管と管理を行う場合、物理的なハードウェアを使用しているため、万が一機器の老朽化や故障などで破損すると、データが消失するリスクもあります。そのため機器のメンテナンスが必須であり、メンテナンスを実施するための手間やコスト、専門的な知識や技術も求められます。
クラウドなら、ネット上の仮想空間でデータを保管しており、サービス提供会社が高度なセキュリティ体制でデータを保管しているため、故障・老朽化の心配はありません。
製造業におけるクラウド化の課題
製造業におけるクラウド化には、以下のような課題があります。
セキュリティと情報漏洩リスク

製造業では設計図や製造ノウハウなどの機密情報を多く扱いますが、クラウド上にデータを移行することで情報漏洩のリスクが懸念されます。
クラウドベンダーのセキュリティ機能に加え、自社でもアクセス制御や暗号化、ログ管理などの対策を講じる必要があります。
既存システムとの連携

多くの製造現場では、独自のオンプレミスシステムや古い設備が稼働しています。これらとクラウドを円滑に連携させるには、APIの整備やデータ形式の統一が必要で、移行にコストと時間がかかるケースがあります。
現場のITリテラシー不足

製造現場ではITに詳しくない作業者も多く、クラウドの導入に対する抵抗感や理解不足が導入の障壁になります。
現場と連携をとりつつ、段階的な教育やシンプルな操作性を備えたシステム設計が求められます。
製造業のクラウド活用事例10選!
ここでは、製造業におけるクラウドの活用事例を紹介します。
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の導入事例を3例紹介します。
製品マニュアル管理システムの構築およびクラウド化

複合機・プリンターなどのオフィス機器の製造・販売事業を手掛ける富士フイルムビジネスイノベーション株式会社では、製品マニュアルなどを従来の紙ベースから公式HPサイトで提供することを検討していました。製品マニュアルなどを公式HPサイトで提供することで、スマートフォンやタブレットといった多様な端末から閲覧することが可能となる一方、オンプレミスのファイルサーバを使用することで資産管理などを含めた管理業務にかかる工数の課題もあり、クラウドベースのシステム構築を行うことになりました。
AWSを選んだ決め手は、クラウド内で仮想サーバの作成が出来る「Amazon EC2」とクラウドストレージの「Amazon S3」サービスの存在が大きな要因です。
AWSを導入したことに付随する主な効果としては2点ありました。1つ目に、オンプレミスの「サーバとしての機能」を「Amazon EC2」へ移行したことにより、ハードウェアの管理という縛りが消え、管理工数が大幅に削減されました。2つ目に、「ファイルサーバとしての機能」を「Amazon S3」へ移行したことにより、セキュリティを確保した上で、柔軟な運用が可能となり、運用コストが削減されました。
AWSにある様々な機能を活用して保守・運用などの業務の自動化やワークフローを実行するためのコンテンツ管理システムの構築などによるさらなるコスト削減に向けた検討を進めていく予定です。
引用:導入事例|富士フイルムビジネスイノベーション株式会社様|テクノプロ・エンジニアリング社
商品開発情報共有システムのクラウド化

複合機・プリンターなどのオフィス機器の製造・販売事業を手掛ける富士フイルムビジネスイノベーション株式会社では、OEM先との商品開発に関わる情報を共有するWebシステムを社内にオンプレミスで構築していました。しかし、オンプレミスのファイルサーバを使用することで資産管理などを含めた管理業務にかかるコストの課題もあり、運用保守を含めコストを抑えることができるクラウドサービスを使用してWebシステムの再構築を行うことにしました。
AWSを選んだ決め手は下記の4点になります。
・オンプレミスの環境をAWSの様々なサービスを利用して、迅速かつ容易に再構築できる
・ストレージのサイズを情報量の増加にあわせて、動的かつ容易に変更することができる
・AWSの機能を活用することで、これまでのストレージやサーバ死活監視(システムの稼働状況監視)だけではなく、幅広い監視を行うことが可能となる
・ストレージのサイズ拡張やデータのバックアップなどを自動化することで運用保守に関わるコストを削減できる
AWSにある様々な機能を活用して保守・運用などの業務の自動化によるさらなるコスト削減に向けた検討を進めていく予定です。
引用:導入事例|富士フイルムビジネスイノベーション株式会社様|テクノプロ・エンジニアリング社
製品稼働情報分析システムの構築およびクラウド化

複合機・プリンターなどのオフィス機器の製造・販売事業を手掛ける富士フイルムビジネスイノベーション株式会社では、全世界中から毎日送信されてくる製品の稼働情報を処理するサーバをオンプレミスで運用していましたが、1台の製品で5年10年と稼働するうえ、毎年新製品がリリースされるため、毎日の稼働情報を処理する台数が将来に渡って増加することから、ハードウェアの拡張設計やサーバーダウン時の復旧に要する工数、トータルコストの課題を、将来を見据えて解決する必要があり、クラウド化することを検討していました。
AWSを選んだ決め手は、下記の3点になります。
・毎年2TB増加するディスク容量への迅速な対応ができる
・既存のDBを分離することにより、リアルタイム処理とデータ検索機能の性能向上が図れる
・アクセス頻度の低いアーカイブデータをS3に退避させることで稼働コストの低減ができる
AWSにある様々な機能を活用した分析作業の自動化や、さらなるコスト削減に向けたシステム構成の検討を進めていく予定です。
引用:導入事例|富士フイルムビジネスイノベーション株式会社様|テクノプロ・エンジニアリング社
Autodesk
Autodesk では、AWS を使用することにより、数百ものシミュレーションを実行させるジェネレーティブデザインの使用のために必要なスケーリングを、数時間や数日単位ではなく 1 時間で実行しました。Autodesk は、エンジニアリング、デザイン、エンターテインメント業界向けのソフトウェアを開発しています。Amazon Relational Database Service (Amazon RDS)、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) といったサービスを使用することで、Autodesk では、インフラストラクチャの管理ではなく、機械学習ツールの開発に注力できます。
引用:Autodesk は、ジェネレーティブデザインと AWS の活用で未来を描く|AWS
GE Renewable Energy (GERE)
GE Renewable Energy (GERE) は、AWS でデジタルサービスプラットフォームを最新化し、スケーラビリティ、可用性、俊敏性を向上させました。カーボンフリー電力の需要をサポートし、コンピューティング能力を向上させるために、GERE のデジタルサービスチームは、40,000 を超える資産のフリート全体で生成されたテラバイトのデータの管理、処理、分析を改善するためのプラットフォームの最新化に取り組みました。GERE は、Amazon EKS や Amazon MSK などの複数の AWS のサービスを利用して可用性が高いデジタルプラットフォームを開発しました。AWS を利用したソリューションに移行することで、GERE はデプロイ頻度を改善し、99.9% の可用性を実現し、インフラストラクチャをプロビジョニングしなくても拡張できます。
引用:AWS での General Electric|AWS
Kemppi
Kemppi では、AWS を使用することで、自社のフラグシップ溶接機械向け IoT ソリューションを市場に投入し、ソフトウェア開発にかかるコストを約 50% 削減しました。このフィンランド企業は、溶接用の機器とアプリケーションソフトウェアのイノベーション、設計、製造についての豊富な実績を持っています。同社は AWS IoT Core、AWS Lambda、Amazon Elasticsearch Service といった AWS のテクノロジーを使用して、IoT に対応した機械を発売しました。
Siemens
Siemens は、Amazon Kinesis、Amazon Elasticsearch Service、Amazon Athena を含む 40 のサービスを使用して、Siemens Mobility、Siemens Power、Gas、Siemens PLM などの複数の事業部門においてイノベーションを推進してきました。Siemens PLM は製品ライフサイクル管理ソフトウェアを何千もの企業に提供し、「AWS優先」戦略に従い MindSphere インダストリアル IoT プラットフォームを強化しています。Siemens Mobility では予知保全 SaaS ソリューションを構築し、Siemens 対応トレーニングの可用性と信頼性を 87% から 99% に向上させました。Amazon EC2 スポットインスタンスおよび AWS Lambda を使用することによって、Siemens Power and Gas 部門は、1 日かかる数テラバイトのデータの取り込みを数分で終わらせることができました。
ケロッグ
現在、同社では SAP Accelerated Trade Promotion Management (TPM) ソリューションを運用しています。このソリューションは SAP HANA を利用するもので、SAP アプリケーション層と HANA データベース層の両方に複数の AWS インスタンスタイプを活用できます。これらの Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) インスタンスは、毎週米国のプロモーションから得られる 16 TB のデータを処理し、毎日数十のデータシミュレーションをモデリングしています。
同社はまた、ケロッグのデータセンターに直接接続された Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) を使用して、会社のネットワークの従業員が直接 SAP TPM にアクセスできるようにしています。HANA を含めたデータバックアップには Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) を、ストレージには Amazon Elastic Block Store (Amazon EBS) プロビジョンド IOPS (P-IOPS) ボリュームを使用しています。同社では、AWS Identity and Access Management (AWS IAM) を使ってログイベントを記録しています。
引用:ケロッグ、ビジネスサービスの開発と提供に AWS クラウドでスピードとアジリティを実現|AWS
Siemens Healthineers
増大する生産データに対応し、共通の開発環境内でデータサイエンス活動を効率化するため、Siemens Healthineers は多変量異常検出ユースケースの実装をクラウドに移行することを決定しました。適切なクラウドテクノロジーを探していたところ、Microsoft が機能豊富な機械学習プラットフォームを提供しているだけでなく、専用の機械学習モデルをサービスとして提供していることを知りました。
これらのサービスは、事前学習済みのカスタマイズ可能な機械学習モデルの統合を容易にし、説明可能性などの追加機能も提供するため、将来性があります。これにより、全体的な開発時間を短縮できます。異常検出のユースケースでは、Siemens Healthineers は、Microsoft Azure Cognitive Servicesの新しくリリースされたAnomaly Detector を実際のユースケースに導入することに成功しました。
引用: Siemens Healthineersは、X線管製造における異常を特定するためにAnomaly Detectorを使用しています。
三菱自動車工業株式会社
三菱自動車工業株式会社は、AI を搭載したセキュリティ オペレーション プラットフォーム Google Security Operations の採用により、三菱自動車グループ(国内外関係会社含む)全体のブランドの維持、事業継続を目的としたセキュリティ戦略を推進しています。
Google Cloud 導入の効果 ✓高度化するサイバー攻撃の脅威に対抗しつつ、次代を見据えたセキュリ ティ管理の礎を確保✓三菱自動車及び一部の関係会社で全体のセキュリティ管理状況までを簡単に把握✓クラウド化により、メンテナンス性の向上と大量のログデータの管理コストの削減を実現 |
引用:三菱自動車: AI を搭載した Google Security Operations を導入し、全社的なセキュリティ基盤を新たに構築
製造業でクラウドを導入する手順・方法|10ステップ【チェックリスト付き!】

製造業でクラウドを導入する方法を手順に沿って解説します。また、最後には、クラウド化の導入準備状況をチェックするためのチェックリストもありますので、ぜひ活用して下さい。
製造業にクラウドを導入する手順・方法|10ステップ
現状分析と目的・目標を設定する【目的整理シート付き!】
まずは、現状発生している課題やクラウド化に適している業務を分析します。
その上で、例えば以下のようなクラウド導入で期待できる効果を検討し、クラウド導入の目的や具体的な数値目標を設定しましょう。
・業務効率アップ ・品質向上 | ・コスト削減
目標を設定することで、最適なクラウドサービスの選択ができ、スムーズな導入につながります。
以下は、クラウド化の導入目的を整理するためのシートです。ご活用ください。
技術的な準備
自社のIT基盤やデジタル基盤が整っているか、チェックと評価を実施します。
技術的な準備ができていないと導入プロセスで頓挫する可能性があるためです。
製造業の場合は以下の点についても確認します。
・工場内のネットワーク環境が整っているか | ・既存の生産設備とクラウドシステムが連携できるか
準備や評価に自信がないときには、クラウド導入支援などの外部サービスを利用すると、スムーズかつ確実に進めることができるでしょう。
国内25,000人以上(※1)の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績(※2)を持つ株式会社テクノプロなら、クラウド導入支援にも豊富な実績と経験があります。それぞれの目的に合ったご提案をいたします。ぜひご相談ください。
※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロおよび(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点
クラウドサービスの選定
幅広いクラウドサービスの中から、自社の目的・目標に合ったものを選びます。
特に以下のポイントに注目すると良いでしょう。
・サービス提供者の製造業における実績・IoT・AI・ビッグデータ対応・既存システムとの統合性 |
特に製造業特有の課題に対応した実績があるクラウドサービスだと、自社でもスムーズな導入につながる可能性が高いです。
以下の表は、主要なクラウドの製造業における特長や強みをまとめました。選定の参考にしてください。
クラウドサービス | 特長・強み |
Amazon Web Services (AWS) | 幅広いサービスを提供。ビッグデータ解析や機械学習を使ったスマートファクトリー構築に適している。 |
Microsoft Azure | IoTやAI、データ分析が強力。製造ラインの監視や予知保全に活用しやすい。 |
Google Cloud Platform (GCP) | AI・機械学習が得意。画像解析や品質管理の高度化に役立つ。 |
SAP Cloud Platform | ERPやサプライチェーン管理が充実。製造業の業務プロセスの効率化に強みがある。 |
Siemens MindSphere | 産業向けIoTに特化。機器データの収集・分析による設備保全や生産最適化を支援。 |
工場調査と現場の実態把握
クラウドシステムは工場を直接管理することになるため、導入前に工場の詳細な調査が求められます。
あらかじめ、以下について把握しておきましょう。
・手動入力データの転送方法 ・クラウド整備のために、工場で必要となる追加の機器や設備 | ・工場内の機械設備のデータ取得方法
工場や現場の特徴を理解しないままクラウドを導入してしまうと、現場に定着しにくいなどの問題が発生します。
現場作業者の意見も積極的に取り入れ、実際の業務フローに沿ったシステム設計を行うことが重要です。
導入計画の策定
製造業におけるクラウド導入は、スモールスタートがおすすめです。
まずは現場の一部で試験的に運用し、効果を検証します。その後各フェーズでの目標と評価基準を明確にし、段階的な導入計画を策定します。

手順書作成ツールや現場帳票電子化システムといった比較的小規模なものから導入してみましょう。
システム設計と構築
要件を確認した後、クラウドシステムの設計、分析、プログラミング、開発を進めていきます。
クラウド化が難しいシステムが存在する場合には、オンプレミスとのハイブリッド構成を選択することもあります。ハイブリッド構成を取る場合は、その連携方法も設計段階で決定します。

クラウドとオンプレミスの両方を採用する
「ハイブリッドクラウド」という選択肢もある
データの移行と運用テスト
既存のシステムやデータをクラウド環境に移行します。
製造業では特に生産に関するデータが企業にとっての財産でもあり生命線でもあるため、データ移行時のリスク管理は必須です。作業は慎重に行うことはもちろん、データの暗号化などのセキュリティ対策も行います。
運用テストは、実際の業務シナリオに基づいたテストケースを用意し、現場スタッフが参加して行います。
テストの結果を踏まえてシステムの調整を行うことで、クラウド環境を実際に導入後に発生する問題を最小限に抑えられることが期待できます。
社内の教育とトレーニングの実施
クラウドシステムの導入効果を最大化するために、対象ユーザー(工場の従業員など)への教育やトレーニングを徹底しましょう。
特に、現場作業者間でITリテラシーに差がある事が多いため、作業者のレベルに合わせた教育プログラムやトレーニングが求められます。
トレーニングと同時に、マニュアルの整備や相談窓口の設置など、導入後のサポート体制も一緒に検討しておくと安心です。
運用と効果測定
クラウド環境の運用開始後は、パフォーマンスやセキュリティを継続的に監視し、効果測定を行いましょう。採用したクラウドによって自社で運用する責任範囲が異なるため、自社の管理する範囲をしっかり把握しておくことも重要です。
定期的に現場からのフィードバックを収集するために、ミーティングなども積極的に実施するのもおすすめです。発生した課題や問題点、改善要望に対してはスピーディに対応すると、現場での定着度が上がりクラウド導入の効果を最大化できるでしょう。
最適化・改善を継続
クラウド導入後は利用状況やコストをこまめに分析し、必要であればリソースを調整したり最適化を実施しましょう。

新しいサービスの導入や、AIやIoTなどの新技術との組み合わせなども検討することで、より業務改善やイノベーションの促進につなげられるでしょう。製造業DX推進でクラウドを導入する場合、長期的な視点で段階的に最適化と改善を行うことが重要です。
クラウド化の導入準備状況チェックリスト
以下は、製造業でクラウド化を検討する際の導入準備状況をチェックするためのチェックリストです。
導入前の確認として活用してください。
チェック | 項目 | 内容の説明 |
目的の明確化 | コスト削減、業務効率化、予知保全、データ活用など、導入目的が明確か。 | |
対象業務の選定 | どの業務(生産管理、在庫管理、IoT連携など)をクラウド化するかを決めているか。 | |
既存システムとの連携性 | クラウドとオンプレミスの連携が可能か、既存の機器やシステムとの整合性がとれているか。 | |
セキュリティ対策 | データ暗号化、アクセス制御、ログ監視など、必要なセキュリティ機能が備わっているか。 | |
データの保管場所と法的要件 | データセンターの所在地が自社の情報管理ポリシーや法規制に適合しているか。 | |
コストと費用対効果 | 初期費用、ランニングコスト、投資対効果(ROI)が見積もられているか。 | |
拡張性と柔軟性 | 今後の業務拡大や変更に応じて、スケールアップまたはダウンが容易に行えるか。 | |
運用体制と保守サポート | トラブル時の対応体制や、ベンダーのサポート品質が十分か。 | |
現場のITリテラシー対応 | 操作のしやすさ、教育・研修の準備、導入後のフォローアップ体制があるか。 | |
導入実績・信頼性 | 導入を検討しているクラウドサービスの製造業向け実績や信頼性が確認できているか。 |
実際にチェックを入れて確認したい場合や社内の多くの人に意見を聞きたい場合は、以下のGoogleスプレッドシート版チェックリストを活用してください。
まとめ
製造業におけるクラウド導入の現状や導入されているクラウドの種類、導入手順や方法、製造業企業の導入成功事例を解説しました。オンプレミスからクラウド環境への移行、およびクラウドシステムの導入を行うことで、製造業では業務効率化や生産性向上、優位性向上といった多くのメリットが得られます。
製造業におけるクラウドの構築なら、国内25,000人以上(※1)の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績(※2)を持つ株式会社テクノプロにお任せください。最適な運用設計から監視・障害対応・コスト最適化まで、一括して任せることができます。クラウドの導入・運用を成功させるために、ぜひプロフェッショナルのサポートを検討してみてください。
※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロ及び(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点
