AWSの内製化を実現する人材育成とは?技術とヒューマンスキルを融合した育成戦略と成功事例

AWS人材育成

この記事で分かること

  • クラウド内製化で企業が直面する課題と技術研修だけでは不十分な理由
  • 技術スキル×ヒューマンスキルを融合した育成サイクルの全体像
  • AWS認定トレーニングとヒューマンスキル研修の選び方と具体的内容
  • 未経験者を短期間で戦力化する実践事例と新卒からの成長ストーリー
  • ベテランリーダーから学ぶ現場で必要なヒューマンスキル

2025年12月12日、テクノプロ・ホールディングス株式会社主催、ピーシーアシスト株式会社、株式会社テクノプロ テクノプロ・エンジニアリング社共催により、「AWSの内製化を実現する人材育成の鍵とは?~技術とヒューマンスキルを融合した、現場で成果を出すテクノプロの育成戦略~」が開催されました。本稿では、その内容をもとに、クラウド内製化を成功させるための人材育成の全体像を解説します。

Index

クラウド内製化で最大の課題は何か?技術スキルだけでは成果が出ない理由

企業のクラウド化が急加速する中、AWSを中心としたクラウドインフラの活用は競争力の源泉となっています。しかし、「構築はできる」段階から「価値を出す」フェーズへ移行するには、自走できる人材の育成が不可欠です。
クラウド内製化で最もハードルが高いと感じられているのは「スキル習得の難しさ」と「人材不足」です。クラウドは非常に巨大な分野であり、どこまで学習すればよいのか見通しが立ちにくいという課題があります。特に、プロジェクト推進力と技術力を両立した人材が少なく、内製化が形骸化してしまうケースが後を絶ちません。

資料:P6 自走人材育成の急務

内製化のよくある失敗パターンは3つに整理できます。第一に、クラウド技術の導入自体が目的となり、本来解決すべき課題やゴールが曖昧になる「技術の目的化」です。最新技術を使うこと自体に価値を見出し、ビジネス課題の解決という本質を見失ってしまいます。

第二に、特定の優秀なメンバーに作業が集中し、ナレッジが共有されないまま「属人化」が進むパターンです。引き継ぎが困難になり、作業内容がブラックボックス化します。標準化されないまま個人の裁量で環境構築が進むため、組織全体の技術力が向上しません。

第三に、システム完成後の「運用体制の不備」です。構築のみに注力し、運用や監視設計が不十分なまま本番稼働してしまいます。問題が発生した際に自力で解決できず、結局外部ベンダーに依存し続けることになります。

資料:P8 内製化のよくある失敗パターン

技術研修だけでは内製化は進まない?現場の問題解決に必要なスキル

技術研修では、EC2やVPCの設計・構築、RDSやS3などの基本サービス構築、基本的な自動化や監視設定、標準的なセキュリティ設定を習得できます。しかし、これだけでは現場で成果を出すことができません。

資料:P7 技術研修だけでは不十分

現場で起きている「技術では解けない問題」が存在するからです。その代表例が、セキュリティ・コスト・信頼性のトレードオフ判断です。技術的には全て強化可能ですが、どこに投資しどこを削るかの意思決定には、ビジネス価値との兼ね合いを理解する必要があります。これは純粋な技術知識では判断できません。

また、業務要件の優先順位が頻繁に変更され、意思決定プロセスが遅延する場面も多くあります。技術的な解決策は複数提示できても、関係者間での合意形成に苦戦するケースが典型的です。さらに、変更管理プロセスの標準化や運用・監視設計の定着が進まない問題もあります。技術的な監視ツールを導入しても、チーム全体での習慣化・文化づくりができなければ意味がありません。

資料:P9 現場で起きている”技術では解けない”問題

自走できる人材には3つのスキルが必要です。第一に技術力です。アーキテクチャ設計、自動化、セキュリティ実装などのクラウド技術を扱える能力を指します。

第二にコミュニケーション力です。開発は一人で行うものではなく、グループで進めるため必須のスキルです。関係者との合意形成、部門横断の調整能力、ナレッジ共有と育成が含まれます。

第三にプロジェクト推進力です。主体性、巻き込み力、進捗管理、他部署との調整力が該当します。これらがあって初めて、プロジェクトを前に進めることができるのです。

資料:P11 自走できる人材 3つのスキル

技術スキルとヒューマンスキルで相乗効果のサイクルを作ることが重要です。学ぶ→試す→共有する→改善するという良い改善のサイクルを作り出すことで、プロジェクトを前に進められます。

技術とヒューマンスキルをどう育てる?AWS認定×実践研修で定着

自走人材を育成するには、技術基盤とヒューマンスキルの両輪が必要です。ピーシーアシストでは、AWS認定トレーニングとヒューマンスキル研修を体系的に組み合わせたプログラムを提供しています。

AWS認定トレーニングには、企業の研修目的に応じた3つの選択肢があります。第一に、AWS主催の認定トレーニングです。AWS公式インストラクターが担当するため、最新かつ標準化された内容で受講できます。新規プロジェクト立ち上げ前など、短期間で知識を統一したい場合に適しています。

第二に、ピーシーアシスト株式会社主催の認定トレーニングです。AWS認定インストラクター(AAI)が担当し、企業のスケジュールに合わせて日程調整が可能です。シフト勤務や繁忙期などで柔軟な日程が必要な場合に向いています。

第三に、Winスクール独自カリキュラムです。個別対面・オンライン・集団研修などさまざまな形式に対応しており、新入社員や第二新卒の基礎教育に活用されています。1回90分単位で受講でき、仕事終わりに少しずつ学べる柔軟性が特徴です。

資料:P14 企業の研修目的に応じたAWSトレーニングの選び方

AWS認定トレーニングは、需要の高いクラウドスキルとベストプラクティスを教えるAWSのエキスパートのインストラクターと一緒に学ぶものです。動画ではなく人が教えるトレーニングであり、ハンズオン演習を含むため実務での活用を意識した深い理解が得られます。

初学者向けには、AWS Discovery Dayという無料セミナーも提供されています。AWSをまったく知らない方でも参加しやすい入門セミナーで、クラウドの基本概念から説明します。非技術者・ビジネス部門でも参加しやすく、技術研修に入る前の「社内の温度感づくり」として活用する企業が多くあります。

一方、ヒューマンスキル研修には3つのプログラムがあります。コミュニケーション実践研修は、e-learningと実践型ワークショップにより、相手とより良い関係を構築し円滑に業務を進めるためのコミュニケーションを向上させます。

インバスケット研修は、限られた時間で多様な案件を優先判断し、問題発見・解決力を鍛えるシミュレーション研修です。架空の案件処理を通じて、仕事の進め方、優先順位の付け方、トラブル対処方法を実践的に学べます。

OUTWARD研修は、人間関係や事象の捉え方による様々な課題に対し、新たなアプローチの理解と、人としてのあり方に気づくプログラムです。プロジェクト推進力や他者との協調的なマインドセットを養います。

エンジニア未経験者を育成した事例もあります。対象者は、ヒューマンスキル研修とテクニカルスキル研修(ネットワーク構築、Linuxサーバー構築、データベース、HTML・CSS、Webシステム開発、AWS基礎、AWS実習、AWS開発演習)を受講しました。その結果、Webアプリケーション開発補助業務に配属され、ソフトウェア開発補助、テスト、正当性検証、システム運用を担当できるレベルに成長しています。

資料:P21 研修事例

新卒AWSエンジニアの成長ストーリー:実施経験とベテランリーダーから学ぶヒューマンスキル

ここで、実際にヒューマンスキルがいかに重要なのか、具体的なプロジェクトの事例から見ていきましょう。まず、本プロジェクトを担当した角本康輔氏についてご紹介します。

テクノプロ・エンジニアリング社 第8統括部の角本康輔氏は、2023年に新卒入社しました。入社直後、ピーシーアシストのインフラコースを受講して基礎を学習しました。その後、実務に入る前に基礎資格の取得を目指し、2023年5月にAWS Certified Cloud Practitionerを、同年6月にはAWS Certified Solutions Architect – Associateを取得しました。この資格取得実績が評価され、角本氏は案件にアサインされることになります。

資料:P4 成長ストーリー

次に、角本氏が参画したプロジェクトの概要を見ていきましょう。

角本氏が参画したのは、製品マニュアルダウンロードサイトでのコンテンツ作成から公開までを自動化するシステムの開発・保守プロジェクトです。AWSで製品情報管理・共有・分析をクラウド化する取り組みでした。
このプロジェクトにおける課題は、製品マニュアルの作成や管理を社内の特定PCで行っていたため属人化し、更新に時間がかかり、資産管理やファイル管理にも多くの工数が必要となっていたことでした。ファイルサーバーの管理やハードウェアの管理が負担となっていたのです。

角本氏は、AWS基盤構築・運用の担当として、DB移行作業、構成見直し検討、システム料金見積もり、システム改修検討、脆弱性対応、EBS縮小作業など、幅広い業務を経験しました。プロジェクト経験としては、基本・詳細設計書の作成、実装、単体・結合・総合試験を担当しています。

資料:P3 自己紹介

角本氏はこのプロジェクトの中で、さまざまな課題にぶつかりました。

社会人・エンジニアとしての経験・知識不足です。実務に関わる中でより深い理解が必要だと感じた角本氏は、プロジェクトと並行して学習を継続しました。2023年12月にAWS Certified Developer – Associate、2024年2月にAWS Certified SysOps Administrator – Associateを取得しています。入社から約9ヶ月間でアソシエイトレベル4資格を取得したことになります。

この課題に対して、角本氏は社内で提供されている研修の受講、AWSの資格勉強、社内勉強会への参加という3つのアプローチで対応しました。資格勉強は現場で求められる設計や運用の考え方を理解する基盤となり、ベテランエンジニアとの共通言語として機能しました。

資料:P6 プロジェクトの課題 ➡ 課題への対応

資料:P7 エンジニアとして抱えていた課題 ➡ 課題への対応

技術スキルだけでなく、現場で成果を出すために必要なヒューマンスキルも、ベテランリーダーから学びました。第一に、コミュニケーション力です。リーダーは、テクノプロ社内の関係部署に対応範囲を誠実に説明し、透明性を確保することで社内調整を円滑化していました。これにより顧客信頼と将来のパートナーシップにつなげる姿勢を目の当たりにし、正直に伝えることが結果的に信頼につながると理解しました。

第二に、主体性と巻き込み力です。リーダーは「一緒にやろう」と声をかけ、チーム全体を巻き込んで課題解決に導いていました。周囲を頼る勇気と、仲間を巻き込むことで成果が大きくなることを実感する機会となりました。

第三に、問題解決力です。リーダーは、課題発生時に複数案を提示し、コストやリスク、運用負荷を比較することで、チームとテクノプロ社内の関係部署双方の納得感を醸成し、意思決定を迅速化していました。選択肢を示すことで合意形成がスムーズになると理解し、問題解決の際に意識するようになったといいます。

資料:P8 ベテランリーダーから学んだヒューマンスキル

こうした技術スキルとヒューマンスキルの両輪により、角本氏はAmazon EC2とAmazon S3を活用してセキュリティを確保しながら柔軟な運用を実現し、管理工数の削減を成功させました。

角本氏の今後の展望は3つの観点から語られます。お客様への貢献としては、AWS機能を活用した保守・運用の自動化、ワークフロー/CMS構築によるコスト削減です。テクノプロへの貢献としては、AWS案件獲得とパートナーとしての成長、クラウドに強い会社として選ばれる存在を目指しています。エンジニアとしては、幅広いクラウド知識を習得し対応力を強化すること、フルスタック+ドメイン知識で価値ある人材へ成長することを目標としています。

資料:P9 今後の展望

AWS内製化成功の鍵とは?「学ぶ・試す・共有する・改善する」サイクルの構築

AWS内製化を成功させるには、技術研修とヒューマンスキル研修を組み合わせ、学んだことを現場で試し、チームで共有し、問題を改善していくサイクルを文化として定着させることが不可欠です。

トレーニングを受けただけでは不十分です。実践と改善のサイクルを回し続けることが必要なのです。角本氏の事例のように、実際のプロジェクトに参画し、ベテランリーダーから学びながら実践することで、真のスキルが身につきます。得られた知見をチームで共有することで、組織全体の技術力が底上げされます。

技術スキルとヒューマンスキルで相乗効果のサイクルを作り、プロジェクトを前に進める。この良い改善のサイクルこそが、内製化成功の鍵といえます。

資料:P22 技術スキル×ヒューマンスキルで相乗効果のサイクルを作る

よくある質問

Q1:まず初めに受けるべき資格やセミナーは何ですか?

基本情報技術者を保持している場合でも、まずは「AWS Cloud Practitioner Essentials」でクラウド特有の用語を学ぶことが推奨されます。次に「Technical Essentials」で実機操作を体験し、その後に中級コースや「Solutions Architect」資格を目指すのが一般的なステップです。

Q2:AWS認定の資格を取得しただけで終わっている人材が多いのですが、どうすればよいでしょうか?

資格取得はスタート地点です。既存Webサイトの移行(月額数百円程度から可能)やファイルサーバーのクラウド化など、小規模な構成でスモールスタートすることが推奨されます。実際に手を動かしてサービスを構築する経験が重要です。

Q3:0から内製化を始めるのはハードルが高いと感じます。最初に取り組みやすいシステムはありますでしょうか?

既存Webサイトの移行など、小規模なシステムから始めるのが現実的です。クラウドの特性として、試行錯誤(失敗したらすぐ辞められる)が可能であるため、小さく始めて段階的に拡大していくアプローチが効果的です。これはDXの取り組みと相性が良いとされています。

Q4:AWSの資格を取得することで、実際のプロジェクトにどのように活かせるのでしょうか?

資格で得た知識は、現場の共通言語を理解する上で非常に有益です。サービス名や仕組みの理解が早くなり、ベテランエンジニアとの会話がスムーズになります。ただし、資格だけでなく、ヒューマンスキルとの組み合わせが現場で成果を出すために重要です。

Q5:AWS、Azure、GCPの選択方法を教えてください。

Office製品との連携を重視する場合はAzureが有力です。コストやサービスの種類、汎用性を重視する場合はAWSが選ばれやすい傾向にあります。用途や既存環境によって選択は異なりますが、AWSは多くの企業で選択肢として選ばれています。

登壇者紹介

湯口 弘一氏
ピーシーアシスト株式会社 Winスクール AWS認定インストラクター

組み込み系のプログラマーとしてC言語等で開発を行った後、Winスクールにてマイコンの研修やIoTなどをはじめ、IT系の研修を多く担当。AWS認定はアソシエイトレベル、プロフェッショナルレベルのすべてに合格。これまでに多数の合格者を輩出しています。

角本 康輔氏
株式会社テクノプロ テクノプロ・エンジニアリング社 第8統括部

AWS未経験から設計・実装・保守まで一貫して担当し、S3移行や構成見直し、脆弱性対応などの運用改善を経験。CLF・SAA・DVA・SOAの4資格を取得し、エンジニアとして研修や勉強会での継続的な学習を重ねながら、現場の最適化と価値向上に取り組んでいます。