導入の背景
拠点業務の複雑化と情報の分散で社内申請手続きが負担に
テクノプロ・グループでは近年、各営業所や拠点に在籍するエンジニアの人数が増加し、入退社や勤怠、社内手続きに関する申請件数が増えていました。拠点事務業務において以下のような課題が顕在化していました。
- マニュアル内容が複雑で、業務内容が理解しづらい
- 検索性が低く、必要なマニュアルの所在が分かりにくい
- 専門用語が多く、特に新任担当者には難解
- 不明点があると本社へ都度問い合わせが必要
- 本社の各部門が独自に最適化した結果、全体としては非効率な構造に
これらの声から、単なる拠点現場の業務効率の問題ではなく、組織構造や情報伝達の仕組みに根本的な課題があることが見えてきました。
こうした課題を受け、テクノプロ・ホールディングスは2024年10月1日に「ビジネスプロセス改革部」を発足しました。部門のミッションは、主に社内業務プロセスを全社横断的に再定義し、設計・導入・推進することでオペレーショナルエクセレンスを実現することです。そして間接部門の業務品質向上と効率化を通じて、全体の業務工数の削減を図ることを目的としています。
ビジネスプロセス改革部の担当者は「制度やルールの見直しには時間と調整が必要である一方、現場の業務負荷は即時に対応すべき課題でした」と語ります。
自然な言語で質問するだけで解決するAIチャットボットで現行制度の業務を円滑に
プロジェクト初期には、拠点事務担当者を対象にアンケートを実施。多くの社員が感じていた「聞きづらさ」「調べにくさ」「回答を待つ時間の業務停滞」「申請ルールが不明瞭」といった課題が見つかりました。
テクノプロ・ホールディングス ビジネスプロセス改革部の担当者は「拠点から見たら、本来どの部署が発行しているマニュアルかどうかではなく、やりたい又はやらなくてはならない業務軸でマニュアルを探せるほうが望ましいはず」と認識。縦割りで整理している情報から業務という横軸で必要な情報を集めてわかりやすく説明してくれるツールとして事務業務AIチャットボットの導入を決定しました。
拠点事務業務における「誰でもわかる」「誰でもできる」業務オペレーションの確立を目的とし、テクノプロ・エンジニアリング社が提案したのがAWSを活用した生成AIのチャットボットです。イントラネットに設置し、事務担当者の疑問を自然言語で質問し回答を得られるために開発を行うことになりました。

AWSの活用
AWSの最新生成AIモデルを採用
開発を受託したテクノプロ・エンジニアリング社が、AIチャットボットにAWS上で稼働するAnthropic社の最新生成AIモデル「Claude 3.7 Sonnet」(*1)を採用しました。このモデルは、複雑な指示理解や専門的な回答生成に優れており、大学院レベルの推論能力(GPQA)および学部レベルの知識テスト(MMLU)において高い性能を示しています。
テクノプロ・エンジニアリング社は、AWS環境を採用した理由は、社内の規程・マニュアル・帳票データなどを安全かつ柔軟に連携させるためです。これにより、AIが社内文書を参照しながら、正確かつ実務に即した回答を生成できるようになりました。
(*1) 初期構築時には「Claude3.7 Sonnet」を採用。現在は順次、最新モデル「Claude Sonnet 4.5」へのアップデートを進めています。これにより、さらなる精度向上と応答品質の強化を図っています。

年間約3,100時間の負荷を軽減
プロジェクトの初期段階において試作版(プロトタイプ)を作成し、実際に使用するユーザーにお試しで利用できる機会を設けました。テクノプロ・エンジニアリング社は、その際のフィードバックを収集・分析し、改善点を一つひとつ反映させながら、プロダクトの品質向上に努めています。
現在は文章生成機能を中心に活用していますが、今後はコード生成やグラフ作成などの機能拡張も検討しています。さらに、FAQや社内ポータルと連携させることで、業務別に最適化された対話モデルを整備していく計画です。これにより、社員が自然な言葉で質問するだけで、関連するマニュアルや帳票、申請先をすぐに確認できる環境を実現します。

その結果、マニュアル検索や問い合わせメールの往復にかかっていた時間が大幅に削減され、年間で約3,100時間(46.9%)の作業削減効果が見込まれています。
依頼したテクノプロ・ホールディングスの担当者も成果を実感しており、「回答内容や操作に関する質問はほとんどありませんので、これまで本社に問い合わせをして回答まで時間がかかったり、何度もやり取りをしなければならなかったりしたことを自ら解決できているのではないかと考えます。利用時間を見ると、本社に問合せできないような時間にAIチャットなら利用できるというとも大きなメリットではあるかもしれませんし、当然本社への問合せも減っているようです」と語っています。
今後の展開
今後は「正確性」と「判断の切り分け」の明確化を推進
AIチャットボットの本格導入に向けては、さらなる改善と仕組みづくりが求められています。特に重要なのは、AIが返す回答の「正確性」と「判断の切り分け」を明確にすることです。そのため、テクノプロ・エンジニアリング社は、回答への信頼性を高めるためにマニュアルや規程に基づいて自動的に回答できる内容と、拠点責任者や本社の判断を要する内容を区別する仕組みづくりを行っています。

また、初回利用者向けのチュートリアル整備など、ユーザー体験の向上も重要な課題です。現在はSalesforceを活用した社員向けのイントラネット上での利用を想定していますが、将来的には関連システムとの連携拡大も視野に入れています。
創造的・対人支援的な業務に集中できる環境をつくる
AI導入はゴールではなく、業務の在り方を見直し、変化に柔軟に対応するための新たな出発点です。これまでのように人がルールを覚えてシステムに合わせるのではなく、AIが人に寄り添い、自然な言葉で業務をサポートする時代へと移行しつつあります。
開発を受託したテクノプロ・エンジニアリング社は、今後も制度やルールの改定、業務システムの更新にもスピーディに対応できる“進化し続けるオペレーション”の実現を目指しています。この取り組みの本質は、単に事務作業を効率化することではなく、社員一人ひとりが判断や確認に悩む時間を減らし、本来注力すべき創造的・対人支援的な業務に集中できる環境をつくることにあります。
AIを「代わりに働く存在」ではなく、「共に働くパートナー」として位置づけます。そのため、誰もが安心してAIを使いこなし、業務に活用できる仕組みを整えることを最終的な目標としています。
この考え方は、テクノプロ・エンジニアリング社が開発を受託する際の重要な指針となります。具体的には、
- 人とAIの協働を前提としたシステム設計
- 利用者の不安を解消する安全性・透明性の確保
- 現場での実装・運用を支える教育とサポート体制の構築
を重視し、単なる効率化にとどまらず、エンジニアリング現場における新しい働き方を実現するソリューションを提供します。これにより、AI活用が「現場に寄り添う技術戦略」として定着し、持続的な競争力強化に貢献します。



