監修者

テクノプロ・ホールディングス株式会社
チーフマネージャー
中島 健治
2001年入社
ITエンジニアとして25年のキャリアを持ち、チーフマネージャーとしてテクノプロ・エンジニアリング社にて金融・商社・製造業など多業界でのインフラ基盤構築に従事してきた。2008年から2024年まで、オンプレミス環境でのストレージ・サーバ統合基盤の設計・構築を手掛け、特に生成AI・データ利活用分野のソリューション開発実績が評価されている。現在は技術知見を活かしたマーケティング戦略を推進している。
多くの企業でDX推進が進み、自社で物理的な機器を所有する従来の形態から、必要なときに必要な分だけリソースを利用するクラウドへの移行が加速しています。
本記事は、高い世界シェアを誇るAWSのサーバーについての仕組みや種類(EC2・Lightsail)、料金体系、構築手順、運用のポイントまで企業向けにわかりやすく解説した実践ガイドです。
この記事を読むことで、自社のビジネスに最適なサーバー選定の基準が明確になり、導入後の具体的な運用イメージを持つことができるでしょう。
オンプレ環境からクラウドへのサーバー移行をご検討の際は、国内25,000人以上 (*1) の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績 (*2) を持つ株式会社テクノプロにご相談ください。
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AWSサーバーとは?企業に選ばれる理由と従来型サーバーとの違い

ITインフラの柔軟性とスピードが企業の競争力を左右する中、従来のオンプレミス環境から、ビジネスの変化に合わせて柔軟に拡張・縮小することができるクラウドへの移行が急速に進んでいます。
数あるクラウドサービスの中でも、AWSは豊富な導入実績と高い信頼性を背景に多くの企業に選ばれています。AWSを導入することで、インフラコストの最適化に加え、IT人材をより付加価値の高い業務へ集中させやすくなります。
本章では、AWSサーバーの基本的な仕組みやオンプレミスとの違い、企業がAWSを選ぶ背景について整理します。
AWSサーバーとは?
AWSは、物理的なサーバーを自社で管理・所有する代わりに、膨大なコンピューティングリソースをオンデマンドで利用できるクラウドサービスです。利用者はブラウザやAPIを通じて数クリックでサーバーを起動でき、使った分だけの費用を支払う柔軟な運用が可能です。
AWSのインフラ基盤は、リージョンとAZ (アベイラビリティゾーン) で構成されています。

| リージョン | 世界各地にある地理的なエリア (物理的な場所) |
| AZ (アベイラビリティゾーン) | リージョン内で独立して設置された拠点で、1つ以上のデータセンターから構成される |
複数のAZにサーバーを分散配置する「マルチAZ構成」を採用することで、1つのデータセンターで障害が発生しても、他のAZで継続運用できる高い可用性を確保できます。
ただし、この耐障害性を実現するには、設計段階でマルチAZを前提とした構成を取る必要があります。
また、AWSを利用するうえで理解しておきたい考え方が「責任共有モデル」です。
AWSでは、セキュリティの責任範囲が以下のようにAWSとユーザーで明確に分けられています。
| AWSの責任 | データセンターの物理的保護・ホストOS・仮想化レイヤーなど、クラウド自体のセキュリティを担う |
| ユーザーの責任 | ゲストOSへのパッチ適用・データ保護・身元管理およびアクセス管理 (IAM) など、クラウド内の設定やデータの安全性を担う |
責任共有モデルを正しく理解し、ユーザー側で適切な設定や管理を行うことが、AWSサーバーの安全な運用の前提です。
AWSサーバーと従来型サーバー(オンプレミス・VPS)との違い
AWSサーバーと従来型のオンプレミスやVPSは、導入スピードや拡張性、料金体系において明確な違いがあります。それぞれの主な特徴と、選択の判断基準となるポイントを整理します。
| 比較項目 | AWSサーバー | オンプレミス | VPS |
| 導入期間 | 数分 | 数か月 | 数分 |
| 料金体系 | 従量課金 | 資産購入・保守費用 | 月額固定料金が主流 |
| 拡張性 | 非常に高い | 低い | 限定的 |
導入期間
オンプレミスは物理機器の調達やデータセンターへの設置作業を伴うため、導入までに数ヶ月を要することが一般的です。
一方で、AWSやVPSは、インターネット経由でリソースを確保するため、数分でサーバー構築を完了できます。短期間に構築できる俊敏性は、ビジネスの機会損失を防ぐための重要な要素となります。
料金体系と拡張性
オンプレミスは、サーバー機器の購入費用や保守費用といった初期投資・固定費が大きく、将来の利用量を見越した過剰投資になりやすいという課題があります。また、リソースの増設には物理作業が必要となるため、拡張には時間とコストがかかります。
VPSは月額固定料金のプランが多く、予算の管理がしやすい反面、用意されたプラン内でしかリソースを利用できず、拡張性は限定的です。
一方で、AWSは実際に利用したリソース量に応じて課金される従量課金制を採用しています。サーバーのスペック変更や台数の増減を瞬時に行える高い拡張性を備えており、アクセス急増への対応や、スモールスタートからのビジネス拡大に最適な設計です。
AWSサーバーが企業に選ばれる理由
ここでは、AWSが多くの企業に支持される主な理由を3つの視点で解説します。
高い世界シェアに裏付けされた信頼性と日本国内の豊富な導入実績
AWSは、クラウド市場において長年高い世界シェアを維持しています。
日本国内においても、大手企業や金融機関、さらには高いセキュリティレベルが求められる官公庁まで幅広い分野での採用事例が豊富にあり、企業がAWSを安心して選択できる大きな要因となっています。
主要なビジネスソフトとの高い互換性と「AWS Marketplace」の利便性
AWSは、SAPやOracleなどの主要なビジネスソフトウェアや、各種セキュリティ製品との高い互換性があります。多くの企業向けソフトウェアがAWS上での動作を公式にサポートしており、既存の業務システムをスムーズにAWS環境へ移行することが可能です。
さらに、AWSには設定済みのサーバーイメージを数多く取り扱う「AWS Marketplace」があります。
AWS Marketplaceを活用することで、複雑なミドルウェアの導入も数クリックで完了し、即座に業務利用を開始できるメリットがあります。
豊富なナレッジと専門人材・パートナーの確保しやすさ
AWSは利用者が非常に多く、日本語の公式ドキュメントや技術ブログ、有志によるコミュニティ活動が活発です。トラブルが発生しても、解決策を見つけやすい環境が整っています。
また、AWSの専門スキルを持つエンジニアの人口が多いため、構築や運用を安心して依頼できる「AWS Partner Network (APN) の認定パートナー企業」が見つけやすい点もメリットです。
AWSサーバーを導入するメリット

AWSサーバーの導入は、企業に多くのメリットがあります。
ここではその主要なメリットを整理します。
従量課金制とAWS独自の割引体系によるコスト最適化が可能
AWSは、実際に使用した分だけ料金が発生する従量課金制を採用しています。
そのため、従来のように将来の利用量を見越して高額なサーバーを購入する必要がなく、必要最低限の構成からスモールスタートすることが可能です。
さらにAWSには、長期利用時の割引制度やコスト最適化を支援する仕組みも用意されており、継続的な運用フェーズにおいてもコスト削減を図ることが可能です。
EC2やLightsailの具体的な料金体系、無料枠、割引制度については、「5.AWSサーバーの料金構造とコスト最適化のポイント」で詳しく解説します。
運用負担の軽減と属人化解消が可能
AWSサーバーの大きなメリットとして、以下のようにサーバー運用に伴う定型作業を自動化し、運用負担を大幅に軽減できる点が挙げられます。
| ・RDSのようなマネージドサービスを活用することで、OS管理やバックアップといった作業をAWS側に任せられる ・マネジメントコンソールやSystems Managerを活用することで、複数サーバーの設定変更やパッチ適用を一元管理できる |
AWSサーバーの具体的な運用管理や、パッチ適用・監視の考え方については、「7.AWSサーバーを運用する際のポイント」で詳しく解説します。
急なアクセス増にも対応できる
AWSサーバーは、ビジネスの成長やアクセス変動に合わせてリソースを柔軟に伸縮できることも大きなメリットです。
例えば、セールやキャンペーンによる一時的なアクセスの急増では、サーバー性能や台数を即座に拡張し、安定したサービスを継続できます。
これにより、平常時は無駄なコストを抑えながら、アクセス集中時にも機会損失を防ぐ運用が可能になります。
AWSサーバーの具体的な拡張設計や、Auto Scalingを活用した構成については「4.失敗しないAWSサーバーの選び方」で、スケールに伴う料金の考え方については「5.AWSサーバーの料金構造とコスト最適化のポイント」で詳しく解説します。
世界水準のセキュリティ認証とマルチAZによる強固なBCP対策がある
AWSサーバーを導入することで、自社で一から構築するのは困難な世界水準のセキュリティ基盤とBCP対策を標準機能として利用できます。
また、リージョン内に物理的に分離された複数のデータセンター(AZ)を活用することで、障害発生時にもサービスを継続できる高可用なサーバー構成(マルチAZ)を容易に実現でき、サービス停止リスクを最小限に抑えた事業継続性の高いサーバー基盤を構築できます。
マルチAZ構成の考え方や、可用性を高める設計については「7.AWSサーバーを運用する際のポイント」で詳しく解説します。
AWSサーバーの種類と主要構成サービス

AWSサーバーのメリットを最大限に活かすためには、適切なサーバーの種類と構成を理解することが欠かせません。
AWSには、用途や運用のしやすさに応じて選べる複数のサーバーと、それらを支えるさまざまな構成サービスが用意されています。
本章では、AWSサーバーの代表的な種類を整理したうえで、主要な構成サービスについて解説します。
AWSサーバーの代表的な種類|EC2とLightsail
AWSで利用できるサーバーの中でも代表的なものとして、高度なカスタマイズが可能な「EC2」と、シンプルさを追求した「Lightsail」があります。
2つの主な特徴は以下の通りです。
| EC2 | ・OS・CPU・メモリ・ストレージを自由に選べ、カスタマイズ性の高い仮想サーバー ・Auto Scalingなどの外部連携に優れ、大規模・複雑なシステム構成に対応可能 ・ネットワークの詳細な設定が可能で、企業の基幹システムや高負荷アプリに最適 |
| Lightsail | ・サーバー・ストレージ・転送量がセットになった、VPSのように利用できるパッケージ型簡易サーバーサービス ・管理画面が非常にシンプルで、専門知識が少なくても迅速に環境構築が可能 ・基本料金が月額定額のプランで、予算管理がしやすい ・最小構成からのスモールスタートに最適 |
高度なシステム要件に合わせて柔軟にリソースを組み上げたい場合には、EC2を選ぶケースが多くなります。一方で、運用の手軽さとコストの予測しやすさを優先する場合には、Lightsailが向いています。
EC2とLightsailの具体的な使い分けについては「4.(1)EC2 とLightsailの使い分け」で詳しく解説しています。
マネージド型データベース「RDS」
「RDS」は、データベースの設置や運用を効率化するフルマネージドサービスです。
複雑で専門知識が必要なデータベースのインフラ管理をAWSに代行してもらうことで、エンジニアはアプリケーションの開発やデータの活用といった本来の業務に集中できます。
RDSの主な特徴は以下の通りです。
| 運用負荷を軽減する自動化機能 | ・データベースエンジンや基盤ソフトウェアのパッチ適用が自動化され、最新のセキュリティパッチを適用しやすい ・最大35日間、秒単位での復元が可能な自動バックアップ機能を標準搭載 ・データベースの容量不足を検知し、必要に応じてストレージを自動拡張する仕組みを選択可能 |
| 高い信頼性と可用性の確保 | ・マルチAZ構成を選択することで、障害発生時に数分で予備機へ切り替える自動フェイルオーバーを実現 ・読み取り専用の複製 (リードレプリカ) を容易に作成でき、アクセス負荷の分散が可能 ・物理的なサーバー管理をAWSに任せることで、ハードウェア故障のリスクを最小限に抑制 |
また、AWSにはRDS以外にも、用途に合わせたマネージド型データベースが用意されています。
| DynamoDB | ・高い拡張性を備えたNoSQLデータベース ・自動スケーリングにより負荷変動に対応可能 ・大量の読み書きが必要なアプリケーション (セッション情報、リアルタイムデータなど) に適している |
| ElastiCache | ・高速なレスポンスを実現するインメモリ型データベースで、故障のリスクを最小限に抑制 ・キャッシュレイヤーとしてデータベースアクセスを高速化・セッションデータ・リアルタイムランキングなどの一時データを保存に適している |
従来のRDB (リレーショナルデータベース) に限定せず、これらのサービスを適材適所で組み合わせることで、モダンでスケーラブルなシステムを構築することが可能です。
高耐久・容量無制限のオブジェクトストレージ「S3」
AWSのストレージサービスの中でも、中心となるサービスが「S3」です。S3はオブジェクトストレージで、インターネット経由で安全にデータを保存・取得できます。
「S3」の主な特徴は以下の通りです。
| ・インターネット経由で安全にデータを保存 ・取得が可能99.999999999%の耐久性を備え、大規模なデータ保管に適している ・バックアップ用途では、バージョニングなどの追加保護機能の導入が推奨 ・保存容量に制限がなく、データの増加に応じて容量を心配することなく保存できる |
この優れた耐久性と拡張性により、画像・動画・PDFなどのドキュメントから、システムログやバックアップデータまで、あらゆるファイルを安全に保存することが可能です。
また、AWSには、S3以外にも以下のストレージが用意されています。
| EBS | ・EC2のハードディスクとして使用 ・OSのインストールやデータベースなど、高速な読み書きが必要な場合に適している |
| EFS | ・複数のサーバーから同時にアクセスしてファイルを共有が可能 ・ネットワーク接続型のファイルサーバーとして機能する |
これらのストレージサービスは、用途に応じて複数を使い分けることが重要です。
それぞれの役割は以下のように整理できます。
| S3 | 画像やログなど「完成したファイル」を、安価に大量保存したいときに利用(メインの保管場所) |
| EBS | サーバーの「システム領域」や「頻繁に更新するデータベース」として利用 |
| EFS | 複数のサーバー間で「同じ設定ファイルやデータ」を共有する用途として利用 |
適切に組み合わせることで、コスト効率とシステムの性能を高いレベルで両立できます。
セキュアなネットワーク環境を構築する「VPC」
AWSを安全に利用するための土台となるのが、仮想ネットワーク環境を提供する「VPC」です。
VPCの主な特徴とセキュリティの仕組みは、次の通りです。
| ユーザー専用の独立したネットワーク空間 | AWS環境の中に、自社専用の隔離されたプライベートな領域を論理的に構築可能 |
| 自由度の高いネットワーク設計 | IPアドレスの範囲・サブネットの分割・インターネット接続の有無などを、要件に合わせて自由に設定可能 |
| 多層防御による通信制御 | 仮想ファイアウォール機能 (セキュリティグループやネットワークACL) を使い、サーバー単位やネットワーク単位で通信を厳格に制限が可能 |
VPCを活用することで、クラウド上にありながらオンプレミス (自社所有の設備) のような安全なネットワーク環境の構築が可能です。これにより、外部の脅威から重要なシステムやデータを保護することができます。
高速配信・負荷分散を支える基盤「CloudFront」と「ALB」
アクセスが集中しても安定したパフォーマンスを維持するためには、負荷を分散し、コンテンツを素早く届ける仕組みが必要です。AWS環境では「CloudFront」と「ALB」を使うことでこれらを実現します。
2つの主な特徴は以下の通りです。
▼CloudFront
| グローバルな高速配信 | 世界中に配置された拠点から、ユーザーに最も近い場所でコンテンツを配信するCDNサービス |
| 低遅延なユーザー体験 | S3と組み合わせ、画像や動画などの大容量データも、国内外を問わず低遅延でスムーズに配信できる |
▼ALB
| アプリケーション層での負荷分散 | HTTP/HTTPSの通信内容に基づき、複数のサーバーへ効率よく通信を振り分ける |
| システムの安定性向上 | 特定のサーバーに負荷が集中するのを防ぐとともに、故障したサーバーを切り離して正常なサーバーのみに通信を誘導する |

CloudFrontによって物理的な距離による遅延を解消し、ALBによってアクセスを最適に分散します。これにより、大規模なWebサイトや動画配信サービスにおいても、ストレスのない高速な閲覧環境を提供できます。
失敗しないAWSサーバーの選び方

AWSには多種多様なサービスがあります。自社プロジェクトの規模・目的・将来性を照らし合わせて最適なサーバーを選ぶことが、コスト削減と運用効率化のポイントです。
EC2 とLightsailの使い分け
AWSサーバーを選ぶ際、まず検討すべきなのが「EC2」と「Lightsail」のどちらを選ぶかです。
EC2は拡張性や柔軟性を重視した標準的なサーバーであり、Lightsailは構築や運用の手軽さを重視したパッケージ型のサーバーです。将来的な拡張の必要性と、構築・運用の手軽さのどちらを優先するかで見極めます。
「EC2」と「Lightsail」の活用シーンと選定基準は以下の通りです。
| EC2 | Lightsail | |
| 主な活用シーン | ・企業の基幹システム ・ECサイト ・複雑な連携が必要な業務アプリケーション | ・個人のブログ ・Webサイト ・小規模な社内ツール ・短期間の検証環境 (テスト環境) |
| 選定基準 | ・将来的にアクセス増に合わせて性能を大幅に上げる可能性がある ・他のAWSサービスと高度に連携させる予定がある ・既存のサーバーのミドルウェアを継続して使う必要がある | ・コストを抑えてスモールスタートしたい ・短期間で構築したい |
| その他 | ・稼働後でも柔軟にCPUやメモリの変更が可能 | ・あらかじめ必要な機能がパッケージ化されており、専門知識がなくても運用可能 |
「EC2」は、ネットワーク構成の再構築が自在に行えるため、状況に合わせてシステムを進化させたいという現場で選ばれることが多いです。「Lightsail」は、サーバーの細かい設定よりも、コンテンツの公開を急ぎたい場合や、専任のインフラエンジニアがいないチームでの運用に向いています。自社プロジェクトの特性に応じて使い分けることが大切です。
EC2のスペック選定ポイント |OS・メモリ・CPU
EC2の導入時は、利用用途を明確にして自社の要件に最適なOSを選ぶことが重要です。メモリ・CPUは必要最低限のリソースを算出して選定するのがポイントです。
詳細な選定ポイントは以下の通りです。
▼OSの選定
| Linux (Amazon Linux・Ubuntuなど) | ・ライセンス料がかからず、コストを抑えて導入ができる ・複数のOSから選定できるが、特別な要件がなければ、AWSに親和性のあるAmazon Linuxを選定するのが一般的 |
| Windows Server | ・ライセンス料が必要となる ・.NET系のアプリケーションや、Active DirectoryなどWindows環境独自の仕組みが必要な場合に選択する |
▼インスタンスタイプ (CPU・メモリ)
| 標準的なWebサイト・アプリ | バランスの良い汎用タイプ (Tシリーズ・Mシリーズ) から選ぶのが基本 |
| 計算処理が重い業務システム | CPU性能に特化したコンピューティング最適化 (Cシリーズ) を選ぶことが多い |
| 大規模なデータベースなど | メモリ容量を重視したメモリ最適化 (Rシリーズ) が向いている |
オンプレミスの場合、数年後の負荷を見越して過剰な高スペックで導入するのが一般的でした。しかし、AWSでは後からスペックを変更できるため、最初から完璧を目指さずにスモールスタートすることが大切です。
将来の拡張 (スケーリング) を見越した構成設計の考え方
AWS導入の最大のメリットは、ビジネスの規模に合わせてリソースを柔軟に変更できる拡張性にあります。将来の成長を妨げないために「オートスケーリング (Auto Scaling) の活用」と「拡張を妨げないネットワーク設計」を意識した設計が必要です。
オートスケーリングの活用
オートスケーリングは、アクセス数の増減に合わせて、サーバーの台数を自動で調整する仕組みです。
オートスケーリングの主な機能は以下の通りです。
| 自動的な負荷対応 | ・スケールアウトにより、キャンペーン時などアクセスが急増した際には自動で台数を増やす対応が可能 ・スケールインにより、深夜などアクセスが少ない時間帯は台数を減らし、無駄な料金の発生を抑える対応が可能 |
| システムの自己回復 | ・稼働中のサーバーにトラブルで停止した場合、オートスケーリングが検知して新しいサーバーを自動で立ち上げ直す対応が可能 |
オートスケーリングを活用することで、パフォーマンスの維持とコスト最適化を両立することが可能です。
拡張を妨げないネットワーク設計
AWSでネットワーク (VPC) の設計が不適切だと将来の拡張が難しく「ボトルネック」が生じます。
このため、拡張を妨げないネットワーク設計が必要となります。
設計の観点は次の通りです。
| IPアドレス範囲に十分な余裕を持たせる | ・CIDR(アドレス範囲)の設定が狭すぎると、将来のサーバー増設時にIPアドレスが足りなくなるリスクを考慮する ・初期設計の段階で、長期的な拡張を見越した広めのIPアドレスを確保する |
| 特定の構成に依存しない (ステートレスな設計) | ・サーバー内部にデータを保存すると、台数を増やした際にデータ同期ができず拡張の妨げになるリスクを考慮する ・S3やRDSを外部ストレージとして活用し、サーバー自体はいつでも「使い捨て・増設」ができる状態 (ステートレス) に保つ |
将来の予測は難しいです。しかし、あらかじめ「拡張できる余白」を残した設計を行っておくことで、ビジネスチャンスを逃さない柔軟なシステム基盤を構築できます。
AWSサーバーの料金構造とコスト最適化のポイント

AWSを賢く活用するためには、その柔軟な料金体系を理解し、無駄なコストを徹底的に排除する視点が必要です。ここでは、AWSサーバーの中核となるEC2の料金体系やコスト最適化について解説します。
EC2の料金構造 |インスタンス料金・通信費・ストレージ費
AWSの料金体系は、使った分だけ支払う従量課金制が基本です。EC2のコストを正しく把握するためには、以下の3つの主要な料金要素を理解しておく必要があります。
| インスタンス料金 (コンピューティング費) | ・サーバーを起動している時間に対して発生する料金 ・多くのOSでは秒単位の請求 (最低60秒) が適用され、短時間の利用でも無駄は生じない |
| ストレージ料金 (EBS) | ・サーバーのOSやデータを保存するディスク領域に対する料金 ・サーバーを停止状態でもデータを保持している限り発生する |
| データ転送料 (通信費) | ・AWSからインターネットへデータを送信する際にかかる費用 ・インターネットからAWSへのデータ受信 (アップロード) は原則無料 |
EC2のコストはこれら複数の要素で決まるため、総合的に検討することが大切です。
また、EC2は、短期間のテスト環境や数時間だけのデモンストレーション環境を、必要なときだけ低コストで構築・破棄できます。
これにより、環境構築のコストリスクを気にせず、新しいミドルウェアの検証やパッチ適用テストが可能です。本番環境と同じ構成を瞬時に複製し、検証が終わればすぐに削除することで、インフラ予算を抑えながら高品質な開発サイクルを維持することもできます。
AWSにおける無料枠の種類・仕組み・注意点
AWSサーバーのコストを最適化する上で無料枠の活用が重要です。AWSには、サーバー本体や周辺サービスの利用料を一定期間無料にする仕組みがあり、活用することで初期コストを大幅に抑えられます。AWSサーバーの利用に関連する無料枠は、主に3つのタイプに分けられます。
12ヶ月間無料枠
12ヶ月間無料枠は、アカウント作成から1年間、主要なサービスを毎月の上限まで無料で利用できます。サーバーと周辺サービスの12ヶ月間無料を整理しました。
| EC2 | ・t2.micro (またはt3.micro) インスタンスが月間750時間まで無料 ・サーバー1台を24時間1ヶ月間ずっと動かしても、1年間は料金が発生しない |
| 周辺サービス | ・サーバーと一緒に使うことが多いS3やRDSも一定量まで12ヶ月間無料で利用できる |
12ヶ月間無料は、サーバー (EC2) の利用開始時に最も恩恵を受けられる仕組みです。サーバーに限らず、周辺サービスも対象となるため、システム全体のコストを抑えられます。
短期トライアル
短期トライアルは、特定のサービスを初めて利用した際に、限定期間中は (数日間〜数ヶ月間) 無料で利用できます。
短期トライアルを利用できるサービスの一例として以下があります。
| Lightsail | ・特定のプランにおいて、初回利用から3ヶ月間無料でサーバーを利用できる ・EC2よりも手軽にサーバーを試したい場合に最適 |
| SageMaker | ・機械学習モデルの構築・トレーニング環境として、初回のみ限定期間の無料トライアルを実施できる |
短期トライアルは、EC2以外のサーバー選択肢を手軽に評価するための仕組みです。特定のプロジェクトや期間限定でサーバーを動かしたい場合に向いています。
無期限無料
無期限無料は、アカウント作成からの期間に関わらず、毎月一定の利用量まで常に無料で使い続けられる枠です。
無期限無料を利用できるサービスの一例として以下があります。
| Lambda | ・月間100万リクエストまで無料 ・サーバーの運用を自動化するスクリプトの実行などに活用可能 |
| DynamoDB | ・25GBのストレージまで無料 ・サーバーと連携するデータベースの管理コストを削減可能 |
無期限無料は、サーバー本体ではなく周辺機能のコスト削減に役立つ仕組みです。長期運用において、サーバーと連携するシステムの維持費を抑える上で重要な要素となります。
無料枠利用における注意点
無料枠を利用する際は、AWSサーバー特有の注意点があります。
注意点を整理すると以下の通りです。
| 超過時の自動課金 | 無料枠の上限 (時間や容量) を超えると、事前の通知なく自動的に従量課金へ切り替わる |
| サーバーの同時稼働による時間超過 | EC2を「2台同時に1ヶ月間」動かすと、合計時間が1,500時間となり、無料枠(750時間)を大きく超過して課金される |
無料枠はあくまで上限内での利用が条件です。予期せぬ請求を避けるため、Budgets (予算アラート) を併用し、利用状況を把握しながら運用することが大切です。
AWSのサーバー料金を抑えるための長期利用割引 (リザーブドインスタンス・Savings Plans)
24時間365日稼働させるサーバーなど、中長期的に利用することが確定している場合は、通常の従量課金よりも安く利用できる長期利用割引を適用することができます。
AWSサーバーでは、主に次の2つの割引制度が用意されています。
| リザーブドインスタンス (RI) | ・特定のスペック (インスタンスタイプ) のサーバーを1年または3年の継続利用をコミット (約束) する ・構成が固まっているシステムに非常に高い割引率が適用される ・特定スペック固定のため、途中でインスタンスタイプを変更する場合は再契約が必要 |
| Savings Plans | ・1時間あたりの利用金額を1年または3年の期間でコミット (約束) する ・契約期間中にスペックを変更しても割引が適用され続けるため柔軟性が高い |
これらの割引制度を活用することで、サーバーの通常料金 (オンデマンド料金) と比較して、最大で約70%近い割引が適用されるケースがあります。
割引制度を利用する条件としては以下があります。
| 契約期間による割引 | ・契約期間は1年または3年から選択 ・3年契約の方が割引率は高くなり、対象期間は使い続ける必要がある |
| 支払方法による割引 | ・「全額前払い」「一部前払い」「前払いなし」から選択 ・最初に支払う金額が多いほど、割引率がさらに向上する |
開発初期はいつでもサーバー利用を止められる通常の従量課金で始めるのが一般的です。システムの構成が安定してきたタイミングでこれらの割引を適用するのが、コスト削減の効果的な進め方です。
AWSサーバー料金の見積もり方法|Pricing Calculator
「Pricing Calculator」は、AWSでサービスを利用した際、どのくらいの費用がかかるのかを試算できるAWS公式の無料見積もりツールです。このツールを使えば、検討しているサーバー構成案から詳細な月額費用のシミュレーションが行えます。
「Pricing Calculator」を使ったサーバーの月額費用をシミュレーションする手順は以下となります。
| 1.サービスの追加 | 「Pricing Calculator」へアクセスし、「見積もりの作成」から計算したいEC2などのサービスを選択します。 |
| 2.リージョンとスペックの設定 | 東京リージョンなどの利用する地域を選択し、OS・インスタンスタイプ・必要なストレージ容量を入力します。 |
| 3.詳細条件の指定 | 「リザーブドインスタンス」などの割引制度を適用するか、データ転送料はどのくらい見込めるかといった詳細情報を入力します。 |
| 4.結果の確認と共有 | 入力した内容に基づき、月額および年間の推定コストが表示されます。作成した見積もりは公開URLとして保存したり、CSVやPDF形式でエクスポートしたりできるため、社内の予算承認資料としても活用できます。 |
「Pricing Calculator」は非常に高機能です。しかし、あくまで入力した条件に基づく試算となります。特にデータ転送料やリクエスト数などの変動要素については、少し余裕を持たせた数値でシミュレーションしておくことが、予算オーバーを防ぐポイントです。
導入前にこのツールで複数のパターンのサーバー構成 (最小構成・推奨構成など) を比較検討しておくことで、納得感を持ってAWSの導入を進めることができます。
AWSサーバー構築における7つの基本ステップ

AWSで実際にサーバーを立ち上げ、安全に運用を開始するための具体的な手順を7つのステップに分けて解説します。各工程の意味を理解しながら進めることで、セキュアで拡張性の高い基盤を構築できます。
Step1 | アカウント作成とルートユーザーの保護 (MFA設定)
最初は、AWSを利用するためのアカウントを作成し、アカウントを不正アクセスから守るためのセキュリティ設定も行います。
AWSアカウントの作成
AWSの公式サイトにアクセスします。画面の右上にある言語から日本語を選択してからアカウント作成を開始してください。
アカウントの作成は画面の指示に従って以下の情報を入力すれば作成できます。
| ・メールアドレス ・パスワード ・氏名 ・連絡先 (住所や電話番号など) ・会社名 (必要に応じて) ・ クレジットカード情報 ・SMS認証用の電話番号 |
ルートユーザーの保護と多要素認証 (MFA) の設定
作成したアカウントは、すべての操作・支払い権限を持つ「ルートユーザー」でログインする状態です。このアカウントが盗まれると、データの漏洩や高額請求などの甚大な被害に直結するため、セキュリティを強化する必要があります。
手順は次の通りです。
| 1.多要素認証 (MFA) の有効化 | IAMコンソールのダッシュボードから、ルートユーザーのMFAを有効化します。 |
| 2.ログイン設定の変更 | 通常のパスワードに加え、スマートフォンの認証アプリ (Google Authenticatorなど) に表示される「一度限りのコード」を入力しなければログインできないように設定します。 |
最も権限の強いユーザーに対して「物理的にその端末 (スマホなど) を持っている本人しかログインできない」状態を作ることで、アカウントの安全性を高めることができます。
Step2 | VPC (仮想ネットワーク) とサブネットの作成
次はサーバーを配置するための専用ネットワーク空間「VPC」を作り、サブネットを作成します。「VPC」の作成とサブネットの作成により、外部からの不正アクセスを防ぎ、安全な通信環境を確保します。
VPCは、クラウド上に自分専用の仮想データセンターを作るようなイメージです。まずはVPC全体に割り当てるIPアドレスの範囲 (例 : 10.0.0.0/16など) を定義し、独立したネットワーク空間を確保します。
次に、VPCを細かく区切った「サブネット」を作成します。サブネットは以下の2種類あり、用途やセキュリティレベルに応じて領域を分割します。
| パブリックサブネット | インターネットとの通信を行うサーバー (Webサーバーなど) を配置するための領域 |
| プライベートサブネット | インターネットから直接アクセスさせたくない重要なデータを配置するための領域 |
サブネットを作成しただけではインターネットには繋がりません。パブリックサブネットは、インターネットへの出口 (IGW) への経路を設定することで、初めて機能するようになります。この点は注意が必要です。
Step3 | インターネットゲートウェイ (IGW) の作成とVPCへのアタッチ
VPCと外部のインターネットを繋ぐための専用の接続口となるインターネットゲートウェイを作成します。作成したインターネットゲートウェイをVPCへアタッチすることで、VPC内のサーバーがインターネット経由でパッチをダウンロードしたり、ユーザーがWebサイトにアクセスしたりすることができます。
インターネットゲートウェイ (IGW) の作成
VPCは作成した直後の状態では、外部ネットワークから完全に隔離されており、インターネットとの通信ができません。そこで、インターネットゲートウェイという通信の専用接続口を作成します。
手順は次の通りです。
| 1.メニューを選択 | VPCダッシュボードの左側にあるメニューから「インターネットゲートウェイ」を選択します。 |
| 2.作成を開始 | 「インターネットゲートウェイの作成」ボタンをクリックします。 |
| 3.名前の入力 | 管理しやすいように「名前タグ」を入力し (例 : my-igwなど) 、作成を実行します。以上で仮想的なドアが完成します。 |
VPCへのアタッチ (紐付け)
作成したインターネットゲートウェイは、作成しただけでは機能しません。有効にするには、「VPC」に取り付ける作業 (アタッチ) が必要です。
手順は次の通りです。
| 1.対象を選択 | VPCダッシュボードのリストから、作成したインターネットゲートウェイを選択します。 |
| 2.アクションを実行 | 「アクション」メニューから「VPC にアタッチ」を選択します。 |
| 3.VPCを指定 | 接続先となる自分のVPCを選択し、アタッチを完了させます。 |
インターネットゲートウェイの作成とアタッチにより、隔離されていたVPC空間に、インターネットの世界へと続くドアが設置されます。
Step4 | ルートテーブルの設定 (通信ルールの定義)
VPC内のネットワーク通信が、どの出口 (ターゲット) に向かうべきかというルールを定めます。このルールがルートテーブルです。ルートテーブルの設定を行うことで、サブネットが正式に「パブリックサブネット」として機能し、サーバーはインターネットの世界へ迷わず辿り着けるようになります。
ルートテーブルの作成と設定手順は次の通りです。
| 1.ルートテーブルの作成 | VPCダッシュボードの「ルートテーブルを作成」から、管理用の名前を入力し、対象のVPCを選択して作成します。 |
| 2.インターネットへの経路 (ルート) を追加 | 作成したテーブルの「ルートを編集」画面を開きます。送信先に「0.0.0.0/0 (すべてのインターネット宛) 」を設定します。ターゲットにインターネットゲートウェイを指定して保存します。 |
| 3.サブネットとの関連付け | 「サブネットの関連付けを編集」画面から、パブリックサブネットとして使いたい領域にチェックを入れて保存します。 |
「インターネット (0.0.0.0/0) へ行く通信は、インターネットゲートウェイを通る」というルールをルートテーブルを設定し、特定のサブネットに関連付けます。これにより、外の世界と通信できる準備が整います。
Step5 | EC2インスタンスの作成とセキュリティグループの設定
EC2インスタンスを作成し、セキュリティグループも設定します。EC2を作成して適切なセキュリティ制限をかけることで、安全なサービス運用の基盤が完成します。
EC2インスタンスの作成
以下の手順で、EC2 (仮想サーバー本体) の起動と、ログインに必要なキーペア (秘密鍵) の取得を行います。これにより、サーバーの機能が利用できるようになります。
| 1.OSとスペックの選択 | EC2ダッシュボードの「インスタンスを起動」から、OS (Amazon Linuxなど) と、用途に合わせたスペック (インスタンスタイプ) を選択します。 |
| 2.ネットワークの設定 | VPCとパブリックサブネットを指定します。外部から接続できるよう「パブリックIPの自動割り当て」が「有効」になっていることを確認します。 |
| 3.キーペア (秘密鍵) | サーバーへ安全にログインするためのキーペアを新規作成します。作成すると鍵ファイル (.pem) がダウンロードできます。※ キーペアは1回のみダウンロード可能なため、注意が必要です。 |
セキュリティグループの設定
サーバーを不正アクセスから守るための仮想ファイアウォールを設定します。AWSのセキュリティグループは「必要な通信のみを許可し、それ以外はすべて遮断する」のが基本ルールです。
手順は以下の通りです。
| 1.セキュリティグループの新規作成 | インスタンス起動画面のネットワーク設定から、新しいセキュリティグループを作成します。 |
| 2.インバウンドルール (許可設定) の追加 | 「ルールを追加」をクリックし、必要なポートを開放します。 (例 : SSHは22番、HTTPは80番、HTTPSは443番) |
EC2の作成とセキュリティグループの設定をセットで行うことで安全にサーバー機能を利用できるようになります。
Step6 | SSH (またはRDP) によるサーバーへの接続確認
サーバーの構築が完了したら、遠隔地から安全にアクセスし、正常にログインできるかを確認します。接続確認を行うことで、これまでのネットワーク設定や鍵の設定が正しく行われたかを証明できます。
ログインには、事前にダウンロードしたキーペア (秘密鍵) と、EC2インスタンスに割り当てられた、パブリックIPアドレスが必要です。
利用するOSに応じて、以下の方法で接続を確認します。
| Linux系サーバー (SSH接続) | MacのターミナルやWindowsのコマンドプロンプトを使用します。Macの場合は事前に「chmod 400 鍵ファイル名.pem」で権限を変更してから、「ssh -i “鍵ファイル名.pem” ec2-user@パブリックIP」を入力してログインします。 |
| Windows Server (RDP接続) | AWSコンソールの接続メニューから「パスワードを取得」を選択し、手元の鍵ファイル (.pem) をアップロードして管理者パスワードを表示 (復号) させます。そのパスワードを使ってリモートデスクトップ接続を行います。 |
Linuxであればコンソール画面、Windows Serverであればリモートデスクトップ画面が表示されれば接続成功です。サーバーが外部からの命令を受け付け、OSが正常に起動していることが確認できたといえます。
Step7 | 予算アラート (Budgets) の初期設定
最後に安心して運用を続けるための「予算アラート」を設定します。AWSは従量課金制のため、設定ミスや消し忘れによる予期せぬ高額請求を防ぐための仕組みを作ることが大切です。
以下の手順で、一定の金額を超えそうになった際にメールで通知を受け取る設定をBudgetsで行います。
| 1.予算作成画面を開く | AWSコンソール上部の検索窓に「Budgets」と入力し、Budgets (予算) の画面へ移動して「予算を作成」をクリックします。 |
| 2.予算タイプと金額の設定 | 「コスト予算(推奨)」を選択し、任意の予算名と月間の予算額を入力します。 |
| 3.アラート条件と閾値の設定 | 「アラートを追加」をクリックし、通知のタイミング (例 : 実際のコストが予算の90%に達したときなど) を設定します。 |
| 4.通知先の登録と完了 | 通知を受け取りたいメールアドレスを入力し、予算を作成します。 |
「万が一使いすぎても、すぐにメールで気づける」という安心感を持っておくことが、クラウドを賢く使いこなすポイントです。
AWSサーバーを運用する際のポイント

AWSを導入するメリットの1つは運用の柔軟性です。一方でAWS特有の運用ルールを理解しておく必要があります。ここでは、安定したサービス運用を継続するために、最低限押さえておくべきポイントを解説します。
従量課金によるコスト変動リスクと予算管理 (Budgets・Cost Explorer) の徹底
AWSは使った分だけ支払う従量課金制です。意図しない設定ミスやアクセスの急増によって、コストが大きく変動するリスクがあります。
以下のツールを用いてコストの推移を常にモニタリングする体制を整えることが大切です。
| Budgetsによる予算上限の設定と通知 | 毎月の予算上限を厳格に管理し、一定の金額 (例 : 予算の80%など) に達した際にメール通知を受け取る設定を行う |
| Cost Explorerによるコストの可視化と分析 | どのサービスに、いつ・どれくらい使っているかをグラフで詳細に可視化する |
「Budgets」は、コストの異常にいち早く気づくことで、取り返しのつかない高額請求を未然に防ぐ防波堤となります。「Cost Explorer」は、サービス別・リージョン別・利用トレンドなどの内訳を分析することで、無駄なリソースが動いていないかを特定し、コストの最適化に役立ちます。
変化する脅威に対応するセキュリティパッチ管理の重要性
インターネット上では日々新しい攻撃手法や脆弱性 (セキュリティ上の弱点) が発見されており、リスクに対応し続ける必要があります。OSやインストールしたソフトウェアに脆弱性が発見された際、それを放置すると外部からの不正アクセスやデータ漏洩、ウイルス感染の標的になるリスクが非常に高まります。
攻撃者は常に「対策されていない古いシステム」を狙っているため、システムを最新の状態に保つことが大切です。
システムを最新の状態に保つために、以下の運用手順で最新のセキュリティ修正 (パッチ) を適用します。
| 情報の収集 | 利用しているOS (Amazon Linuxなど) やソフトウェアのセキュリティアップデート情報を定期的にチェック |
| バックアップの取得 | パッチ適用によって稀にシステムの動作に影響が出ることがあるため、作業前には必ず「AMI (イメージ) 」などでバックアップを取得 |
| 最新パッチの適用 | 定期的なメンテナンス時間を設け、最新のセキュリティパッチを適用してシステムを最新の状態に更新 |
AWSの「責任共有モデル」では、物理的なインフラの保護はAWSが担当します。しかし、「サーバーOSから上のセキュリティ管理 (パッチ適用など) 」は利用者の責任となります。「AWSだから自動で守ってくれるだろう」という思い込みは禁物です。
AWSの障害発生時に備える可用性 (マルチAZ) の考え方
AWSは高い信頼性を誇ります。しかし、落雷や地震といった自然災害や大規模なネットワーク障害などによって、データセンター単位でトラブルが発生する可能性はあります。万が一の事態でもサービスを止めないための考え方がマルチAZです。
1つのAZだけでサーバーを動かす「シングルAZ」構成では、そのデータセンターが停止した際にサービスも止まってしまいます。
マルチAZは、同一リージョン内で複数のAZにサーバーを分散配置する構成をとることで、サービスの停止を防ぐことが可能です。

マルチAZ構成は安全性が高まる一方で、サーバーを複数台動かすための費用や、AZ間のデータ転送費用が発生します。
「止まることが許されない基幹システムはマルチAZ」「コスト優先のテスト環境はシングルAZ」といったように、ビジネスの重要度に応じて構成を選択することが大切です。
技術トラブルを即座に解決する「AWSサポート」プランの選び方
サーバー障害など、自社の担当者だけでは解決が難しい技術的なトラブルや、システムの構成に関する相談が必要になった際、AWSのエンジニアから直接支援を受けられるのが「AWSサポート」です。
ビジネスの重要度に応じて、最適なプランを選択することが安定運用のポイントとなります。
サポートプランは、2つの観点で自社にあったプランを選定します。
▼問い合わせの回答速度
| 検討ポイント | トラブル発生時、どの程度の早さで初動対応が必要か |
| ベーシック (無料) | 技術的な問い合わせは不可 (回答時間の保証なし) |
| ビジネス以上 (有料) | 24時間365日体制。緊急時は最短数十分で回答が開始 |
▼AWSのアドバイスと支援の範囲
| 検討ポイント | 不具合の解決や、構成の相談まで行いたいか |
| ベーシック (無料) | 請求やアカウント管理の相談のみ可能 |
| ビジネス以上 (有料) | 技術的な質問、構成の提案、AIなどによる高度な支援が可能 |
「サービス停止が許されない本番環境ならビジネス以上」「テスト環境なら無料のベーシック」など、トラブル時のリスクと費用のバランスで決めることがポイントです。
AWSサーバー運用を支えるパートナーの活用
AWSは非常に高機能ですが、その分、最新技術のキャッチアップや安全な運用には専門的な知識が求められます。「社内に専門家がいない」「構築に時間をかけられない」といった場合には、AWSパートナー企業 (導入支援ベンダー) を活用することも有力な選択肢です。
パートナー企業に依頼することで、以下のようなメリットが得られます。
| ・導入スピードの向上 ・システムの安全性と信頼性を確保 ・本業 (コアビジネス) への集中 |
「最初はプロに基盤を作ってもらい、徐々に内製化を進める」あるいは「構築後の監視・運用だけを任せる」といった柔軟な使い方も可能です。
自社のリソースと技術レベルを見極め、パートナーを「戦略的なパートナー」として活用することで、自社のリソースを本業に集中させることができます。
まとめ
本記事では、AWSサーバーの特徴から具体的な構築手順と稼働後の運用ポイントまでを解説しました。適切な構成選びと正しい設定フローを心がけることで、安全でコストパフォーマンスの高いインフラ環境を実現できます。
AWSは「まずは小さく始めて、必要に応じて柔軟に拡張する」という使い方ができるのが大きなメリットです。まずは無料枠などを活用して実際に手を動かし、自分だけのサーバーを構築することからはじめましょう。
オンプレ環境からAWSサーバーへの移行をご検討の際は、さまざまな業種業態のニーズに沿った多くの実績がある株式会社テクノプロへご相談ください。それぞれの目的に合ったAWSサーバーへの移行方法をご提案いたします。

監修者

テクノプロ・ホールディングス株式会社
チーフマネージャー
中島 健治
2001年入社
ITエンジニアとして25年のキャリアを持ち、チーフマネージャーとしてテクノプロ・エンジニアリング社にて金融・商社・製造業など多業界でのインフラ基盤構築に従事してきた。2008年から2024年まで、オンプレミス環境でのストレージ・サーバ統合基盤の設計・構築を手掛け、特に生成AI・データ利活用分野のソリューション開発実績が評価されている。現在は技術知見を活かしたマーケティング戦略を推進している。


