基幹システムのクラウド化は国や自治体だけでなく、一般企業にも広まっています。
この記事では、基幹システムのクラウド化の流れやクラウド化のメリット12選、課題とその対策等を解説し、オンプレミス型が合う企業とクラウド型が合う企業の特徴を紹介します。
ぜひ参考にしてください。
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基幹システムのクラウド化の流れ

地方公共団体の基幹システムは、国のガバメントクラウド上に構築される標準準拠システムへの移行が原則化され、2025年度までの移行を目指すという大きな流れが進んでいます。
これは、従来の自治体ごとに違う維持管理方法や改修の負担を軽減し、住民サービスの向上を図るため、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律により定められました。
一方、一般企業においてもクラウド化は広まっており、令和2年の調査ではその利用状況について以下のような結果がでています。
クラウドコンピューティング(以下「クラウド」という。)を「全社的に利用している」企業の 割合は 39.3%、「一部の事業所または部門で利用している」は 29.2%となっており、それらを合 わせたクラウド利用企業の割合は6割以上となっている(図表 3-1 参照)。 ![]() |
引用:令和2年 通信利用動向調査報告書 (企業編)第3章クラウドコンピューティング
また、クラウド利用の理由としては、以下のような調査結果となっています。
企業がクラウドを利用している理由をみると、「場所、機器を選ばずに利用できるから」が 45.5%と最も高く、次いで、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」(42.3%)、「災害時 のバックアップとして利用できるから」(38.1%)、「安定運用、可用性が高くなるから」(37.3%) などとなっている(図表 3-4 参照)。 ![]() |
引用:令和2年 通信利用動向調査報告書 (企業編)第3章クラウドコンピューティング
AI活用を含むデジタル化の推進において、クラウドは基盤としてその重要性を増しています。2023年3月の総務省の調査では今後の予測について以下のような結果が出ており、今後も一般企業におけるクラウド化は継続的に進展していくことが予想されます。
日本のパブリッククラウドサービス市場5は、高い成長率を遂げ、2023年は3兆1,355億円(前年比25.8%増)にまで増加する見込みである(図表Ⅱ-1-8-5)。![]() |
引用:令和6年 情報通信白書の概要 第Ⅱ部情報通信分野の現状と課題
基幹システムをクラウド化するメリット12選!

ここでは基幹システムをクラウド化するメリットを解説します。
導入時の初期費用や運用コストが低い

オンプレミス型の基幹システムでは、下表のようにサーバーなどのハードウェアの購入やシステム構築のための初期投資が必要です。また、ランニングコストとしてハードウェアの定期的な更改費用もかかります。
一方、クラウド型では、自社のハードウェアが不要であることからオンプレミス型と比較すると初期費用を抑えることが可能で、システム変更のためのハードルが下がります。
クラウド型 | オンプレミス型 | ||
初期費用 | ハードウェア購入費用 | なし | あり |
システム構築費用 | あり | あり | |
ランニングコスト | 運用・保守・管理費用 | あり | あり |
ハードウェア更改費用 | なし | あり | |
ライセンス費用(利用料) | あり | あり(一括や年間など) |
運用や保守、管理を自社で行えばコストをさらに下げることもできますが、人的リソースをかなり割かなければならないことに注意が必要です。もちろん、安定した運用には知識や技術をもったスタッフの存在も欠かせません。
運用支援会社に任せることでこれらの課題を克服することができるため、コストとの兼ね合いを検討することが大切です。
インフラ管理に割くリソースを抑えられる

オンプレミス型システムでは、サーバーやネットワークの管理や保守、セキュリティ対策を自分たちで行わなければなりませんでした。そのため、かなりのリソースが必要でした。
一方、クラウド型の基幹システムでは、インフラやセキュリティの管理を外部に任せることができるため、もっと戦略的な業務に集中できるようになります。
セキュリティを担保・強化できる

クラウドサービスを活用すれば、セキュリティ面の心配も減らすことができます。
昨今は、例えば情報漏洩や外部からの攻撃など、企業を取り巻くセキュリティリスクはどんどん高まっています。クラウド事業者にはそれらのリスクに対して必要な知識や技術があり、最新のセキュリティ対策を常に取り入れています。
もちろん、しっかりとしたセキュリティを備えた信頼できるクラウド基盤を選ぶことが大切です。
常に最新の状態を維持できる

クラウド型の基幹システムは、サービス提供事業者によって自動的にプログラムの更新(アップデート)が行われます。
利用企業が手作業でシステムのセットアップや更新を行う手間なく、最新の業務環境を維持することが可能です。
また、法改正があった場合にも、ベンダーがアップデートを担当するため、システム改修にリソースを割くことなく業務に集中できます。
導入期間を大幅に短縮できる

クラウド型なら短期間で導入可能で、特に迅速なシステム稼働が求められる場合には大きなメリットとなります。
オンプレミス型の基幹システムでは、導入時にはサーバーやネットワーク機器などのハードウェアを選定、調達し、設置・配線・設定といったITインフラの構築が必要です。ハードウェアの選定や調達だけでも数か月を要することがあり、導入期間が長くかかる傾向があります。
クラウドサービスは、既にハードウェアが構築された状態で提供されるため、サービスを迅速に利用可能です。
自動バックアップできる

自然災害が多い日本では、非常時の事業継続計画(BCP)の策定が企業にとって不可欠です。
クラウド型の基幹システムならデータのバックアップは自動で行われるため、日々手作業でバックアップを行う必要がありません。
また、クラウドサービス事業者は、別のデータセンターにバックアップデータを複製して保管するなど、災害対策に力を入れています。
複数の拠点でデータがバックアップされることで、万が一の災害時にもビジネス活動の継続が可能になります。
経営状況を可視化できる

クラウド型基幹システムは情報を一元管理でき、経営状況を可視化します。
可視化された経営状況は、業務構造の改善や調達コストの見直しなど、組織全体の向上につながる経営判断に役立ち、最新の正確な情報を基に迅速な意思決定を行うことができるでしょう。
各部門に分散していたデータが統合されることで、より正確で包括的な情報に基づいた判断が可能になります。
既存システムの老朽化に対応可能

基幹システムは企業の根幹業務を管理していると言えますが、オンプレミス型では年々システムの老朽化が進むリスクがあります。
老朽化したシステムを使い続けることで、ビジネス環境の変化に迅速に対応できなくなったり、多くの維持管理費が費やされたりするなどの問題が考えられます。
クラウドへの移行により、これらの問題の解決が期待できます。
リモートアクセスに対応

クラウド型の基幹システムは、インターネット環境があれば、オフィスだけでなく自宅や出張先など、社外のさまざまな場所からアクセスして業務を進めることができます。
従業員の柔軟な働き方や生産性の向上が期待できます。
手軽にネットワーク化でき、分業もしやすい

クラウド型基幹システムは、インターネットでアクセスすることによって離れた場所にいる社員でもシステムを共有することができます。
オンプレミス環境で遠隔地の基幹システムを連携させるためには、WAN環境の構築に多大なコストが必要なため、クラウド型を利用することで、余計なコストをかけずにスムーズな情報共有や分業が可能になります。
ミスの減少や業務効率化・標準化

従来のシステムでは、例えば経理の経費集計や人事の給与計算など手作業による業務が多く、ミス発生のリスクが少なくありませんでした。
クラウド型基幹システムなら、データの集計や管理をシステム上で行うことで手作業によるミスが大幅に減少し、業務の効率化・標準化、生産性の向上が期待できます。
ペーパーレス化・DX化の促進

業務プロセスをデジタル化すればペーパーレス化を推進でき、印刷代や郵送コストを削減できます。
また、クラウドによる基幹システムの導入は、全社横断的なデータ活用や業務効率化が促進され、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の基盤となります。
基幹システムのクラウド化におけるデメリットや課題と対策
基幹システムのクラウド化では、注意すべき点もあります。
令和2年の調査では、クラウドサービスを利用していない企業の理由は以下のように述べられています。
クラウドを利用していない企業の理由をみると、「必要がない」の割合が 42.0%と最も高くな っており、以下、「情報漏えいなどセキュリティに不安がある」(37.0%)、「クラウドの導入に伴 う既存システムの改修コストが大きい」(29.2%)、「ネットワークの安定性に対する不安がある」 (15.2%)、「メリットが分からない」(14.0%)などとなっている(図表 3-6 参照)。![]() |
引用:令和2年 通信利用動向調査報告書 (企業編)第3章クラウドコンピューティング
ここでは、基幹システムをクラウド化しない理由の上位に挙げられている「セキュリティ」と「コスト」の課題について、対策と共に解説します。
セキュリティ
基幹システムでは機密情報を扱うため、セキュリティには十分な対策が必要です。
クラウド環境には、自社では難しい高度なセキュリティ対策が整備されています。サービスにもよりますが、自社サーバーよりもセキュリティ体制が整備されている場所で基幹システムを扱えるため、事業者の責任範囲についてはリスクは低いと言えるでしょう。
一方で、クラウドには責任共有モデルの概念があり、サービス事業者と利用者がそれぞれ管轄する領域の責任を負いますが、データに関しては利用者の責任範囲となります。
クラウド事業者によるセキュリティ対策を最大限に活用しつつ、自社の責任範囲であるデータやアカウント等のセキュリティ対策を適切に実施することが、基幹システムを安全にクラウド化するための重要なポイントです。
また、インフラ管理やセキュリティ管理の多くを外部に委託すれば、自社の負担軽減にもつながります。
クラウドの導入に伴う既存システムの改修コスト
基幹システムをクラウドへ移行する場合、その仕様に合わせてアプリケーションの非機能要件部分や運用方法を改修・変更しなければならない場合があります。また、周辺システムとの互換性やサポートなどの問題によって、対応のための改修が必要になることもあります。
基幹システムをクラウド化するにあたって、これらのコストは確かに大きいでしょう。
一方で、オンプレミス型の利用を続けることで、ハードウェアの更改費用や非常時の事業継続計画(BCP)を自社で準備するための費用などのコストが見込まれます。
クラウド化によって不要になるコストや、クラウドを導入することで得られるメリット等を考慮し、検討する必要があるでしょう。
基幹システムにオンプレミスを利用するメリットとデメリット

ここまで、基幹システムをクラウド化するメリットや課題とその対策を解説しました。
ここではオンプレミスを基幹システムに利用する場合のメリット・デメリットについても整理します。
クラウド化する場合との比較・検討に役立ててください。
基幹システムにオンプレミスを利用するメリット
カスタマイズ性
オンプレミスの大きなメリットは、独自システムの構築が可能であることです。独自の業務プロセスに合ったシステムに対して、柔軟にカスタマイズできます。
一方、クラウド型ではそこまでのカスタマイズ性を求めることは難しいことがほとんどです。どのようなシステムが必要なのか、必要と思われるシステムをクラウド型で実現することは難しいのか等、よく検討する必要があります。
システムを自社でコントロール可能
オンプレミス型では、機密情報の取り扱いや特定のセキュリティ要件、ネットワーク構成、パフォーマンス等を細かいニーズに合わせて設計・構築・運用できるというメリットがあります。
一方で、これは裏を返せばシステムにおける自社の責任が非常に広いということにもなるため、注意も必要です。
基幹システムにオンプレミスを利用するデメリット
2章では、クラウド型のメリットと比較してオンプレミス型のデメリットを以下のように紹介しました。
・導入するまでに時間がかかる ・運用や管理に手間がかかる ・リモート環境でアクセスできない ・非常時の事業継続計画(BCP)対策に手間とコストがかかる ・セキュリティ対策への手間とコストがかかる | ・導入コスト・ランニングコストが高額
これらのほかにも、オンプレミスを利用する場合には拡張性の制限というデメリットも挙げられます。
自社の成長に合わせてシステムの拡張が必要になった場合、オンプレミスでは再設計が必要なケースが多く、手間や時間、コストがかかります。また、物理的に場所の確保が難しいこともあります。
導入時にオーバースペックで設計したり、拡張が必要になるたびに作業を行うなど、クラウド型と比べてデメリットが大きいでしょう。
【チェックリスト付き!】基幹システムはクラウドかオンプレミスか?判断のポイント

ここまで、基幹システムにクラウドを利用した場合やオンプレミスを利用した場合についてメリットやデメリットを解説しました。
ここでは、どちらの基幹システムが合っているのかを判断するポイントを以下のチェックリストにまとめました。
各質問で当てはまるものにチェックを入れ、左右のチェックの数を数えてください。
左が多い場合はクラウド化がおすすめの企業、右が多い場合はオンプレミス型がおすすめの企業です。
クラウド化がおすすめの企業 | オンプレミス型がおすすめの企業 | ||
初期費用を抑えたい | 高度なセキュリティ要件がある | ||
短期間でシステムを立ち上げたい | 特定の業務システムと密接に連携している | ||
社内にIT専任者が少ない/いない | 法規制や社内ルールでデータ外部保存が禁止されている | ||
拠点やリモートワークが多い | インターネット接続に依存したくない | ||
需要の増減に柔軟に対応したい | 社内に専門のIT部門があり、運用管理ができる | ||
災害時でも業務を止めたくない | 一度導入したシステムを長期間使い続ける | ||
最新技術や機能を常に使いたい | システムの構成や動作環境を細かく制御したい |
実際にチェックを入れて確認したい場合や社内の多くの人に意見を聞きたい場合は、以下のGoogleスプレッドシート版チェックリストを活用してください。
目安のひとつとして、基幹システムを選択する際の参考にしてください。
まとめ
この記事では、基幹システムのクラウド化の流れやクラウド化のメリット12選、課題とその対策等を解説し、オンプレミス型が合う企業とクラウド型が合う企業の特徴を紹介しました。
基幹システムのクラウド化は、多くの企業にとって重要な課題ですが、専門知識や経験を持つ人材の確保が大きな壁となることがあります。 基幹システムのクラウド化なら、国内25,000人以上(※1)の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績(※2)を持つ株式会社テクノプロにご相談ください。
※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロ及び(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点
