オンプレミスのNASやファイルサーバーのデータを、AWSへ移行・同期したいと考えていませんか。AWS DataSyncという名前は知っていても、料金や運用負荷、自社の要件に合うかどうかを判断しづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、AWS DataSyncの基本、料金体系、導入時の注意点、失敗しやすいポイントまでを具体的にご紹介します。
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まず結論|AWS DataSyncが向くケース・向かないケース

AWS DataSyncは、オンプレミス環境とAWSの間で、大容量データの移行や継続同期を行うためのマネージドサービスです。
まず結論から示すと、DataSyncは「継続的な同期を伴うオンライン移行」に強みを持つ一方、完全なオフライン移送や単純なファイル転送には別のサービスのほうが適しています。自社の要件がどちらに近いかを最初に見極めることが、導入判断の第一歩になります。
本記事では、この結論を踏まえたうえで、DataSyncの仕組みや料金、導入の進め方を順を追って解説します。
AWS DataSyncが向いているケース
AWS DataSyncは、次のようなケースに向いています。
・オンプレミスからAmazon S3・Amazon EFS・Amazon FSxへデータを移行したい
・AWSへ定期的なバックアップや継続同期を行いたい
・rsyncや自作スクリプトの運用負荷を減らしたい
・差分同期を活用したデータ連携基盤を構築したい
AWS DataSyncは、転送の自動化や整合性検証の機能を備えており、大容量データの移行・同期を効率化できます。特に、オンプレミスとAWSを一定期間並行運用するケースでは、継続的な差分同期を実現しやすい点が特長です。
AWS DataSyncが向いていないケース
一方で、AWS DataSyncが向いていないケースもあります。
・数百TB級の大容量データを短期間で移行したい
・オフラインで物理搬送による移行を行いたい
・S3間レプリケーションだけを実現したい
このようなケースでは、Snow FamilyやS3 Replicationなどの代替サービスが適している場合があります。導入を検討する際は、自社の要件に合う転送方式を早い段階で見極めることが重要です。
DataSyncと主要サービスの違いを比較
DataSyncと似た用途で語られることが多いサービスとの違いを整理すると、以下のとおりです。
◎=最適、○=対応可、△=一部制約あり、×=非対応
| 要件 | AWS DataSync | AWS Snow Family | AWS Transfer Family | S3 Replication |
| オンプレミスからAWS移行 | ◎ | ◎ | △ | × |
|---|---|---|---|---|
| 継続同期 | ◎ | × | ○ | ○ |
| 大容量データ | ○ | ◎ | △ | △ |
| オフライン移送 | × | ◎ | × | × |
| 自動同期 | ◎ | △ | ○ | ◎ |
AWSにはデータ移行や同期に利用できる複数のサービスがあります。用途によって適したサービスは異なります。
- AWS DataSync:オンプレミスとAWS間の移行・継続同期
- AWS Snow Family:大容量データのオフライン移送
- AWS Transfer Family:SFTP・FTPSによるファイル転送
- S3 Replication:S3バケット間の自動複製
例えば、取引先とのファイル受け渡しが目的ならTransfer Family、S3間のレプリケーションが目的ならS3 Replicationが適しています。
一方、オンプレミスからAmazon S3・Amazon EFS・Amazon FSxへデータを移行・同期したい場合は、AWS DataSyncが有力な選択肢となります。
オンライン移行とオフライン移行の判断基準
移行方式を選ぶ際は、データ量と利用できるネットワーク帯域を確認することが重要です。
想定データ量を利用可能な帯域で割ることで、おおよその転送時間を試算できます。試算した転送時間が現実的な範囲に収まるなら、AWS DataSyncによるオンライン移行が適しています。
一方、数百TB規模の大容量データやネットワーク帯域が不足するケースについては、前述の「AWS DataSyncが向いていないケース」のとおり、オフライン移行の検討が必要です。
オンラインとオフラインを組み合わせる選択肢
すべてを1つの方式で移行する必要はありません。例えば、次のような構成も可能です。
- 初回の大容量データをSnow Familyで移行
- その後の差分データをDataSyncで同期
AWS DataSyncの基本を3分で整理
AWS DataSyncとは何か
AWS DataSyncは、オンプレミスとAWSストレージ間のデータ移行・同期を自動化するサービスです。
主な特徴は次のとおりです。
- 大容量データを高速転送できる
- 差分同期を自動化できる
- データ整合性を検証できる
- 転送時の暗号化に対応する
手作業や自作スクリプトによる運用と比べて、移行や同期を効率化しやすい点が特徴です。
DataSyncが解決する課題と代表的なユースケース
DataSyncは、データ移行や同期に伴う運用負荷の軽減に役立ちます。
活用例は次のとおりです。
- オンプレミスからAWSへ移行する
- バックアップ基盤をAWSへ集約する
- データレイクへデータを連携する
- DR対策として拠点間同期を行う
差分同期や再実行機能を備えているため、継続的なデータ連携にも向いています。
対応する転送元・転送先
AWS DataSyncは、さまざまなストレージ間のデータ転送に対応しています。
主な転送元
- NFS対応ファイルサーバー
- SMB対応ファイルサーバー
- HDFS環境
- Object Storage
主な転送先
- Amazon S3
- Amazon EFS
- Amazon FSx
オンプレミスからAWSへの移行だけでなく、AWSサービス間のデータ転送にも利用できます。
DataSyncの主要機能を理解する
DataSyncを利用する際は、次の用語を押さえておきましょう。
DataSyncの基本用語
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| エージェント | オンプレミスで動作する転送ソフト |
| Location | 転送元・転送先の設定情報 |
| Task | データ転送ルールの設定単位 |
転送モードの違い
| 項目 | Basic mode | Enhanced mode |
|---|---|---|
| 処理方式 | 逐次処理(一覧化→転送→検証を順番に実行) | 並列処理(一覧化・転送・検証を同時実行、高速) |
| ファイル数上限 | クォータあり(オンプレミス等⇔AWS間:最大5,000万、AWSストレージ間:最大2,500万のファイル・オブジェクト・ディレクトリ) | 実質無制限 |
| 対応可能な転送先 | DataSyncが対応する全ロケーション(Amazon FSx for Windows File Serverなど、Enhanced mode非対応の転送先を含む) | Amazon S3・Amazon EFS・Amazon FSx for Lustre間(エージェント不要)、NFS/SMB/HDFSとAWSストレージ間(Enhanced modeエージェント使用)、他クラウドとAmazon S3間 など |
| データ検証 | デフォルトで全データを検証 | 転送したデータのみ検証(検証範囲を絞り高速化) |
| 料金体系 | 転送データ量に応じた従量課金のみ | 転送データ量課金に加え、タスク実行ごとに追加料金(AWS公式の料金試算例では1回あたり0.55ドル) |
※対応状況・料金は変更される可能性があるため、最新情報はAWS公式サイトでご確認ください。
DataSyncでは、転送元・転送先をLocationとして登録し、その間の転送ルールをTaskで定義します。また、転送規模や要件に応じてBasic modeとEnhanced modeを使い分けます。

料金体系と見積もりの考え方
DataSync本体の料金体系
AWS DataSyncは、転送したデータ量に応じて課金される従量課金制です。特に初回のフル転送では費用が発生しやすいため、事前に転送量を把握しておきましょう。継続同期の場合は、増分データ量に応じて費用が発生します。
※最新の料金はAWS公式サイトで確認してください。
費用の試算方法とイメージ
DataSyncの費用は、次の要素を積み上げて試算します。
基本の計算式
転送費用 ≒ ①転送データ量(GB)× GB単価 + ②S3等へのリクエスト料金(LIST/HEAD/GET/PUT等) + ③Enhanced mode利用時のタスク実行料金 + ④CloudWatch・PrivateLink・KMSなど周辺サービスの費用
GB単価・リクエスト単価・タスク実行料金はリージョンや転送パターンによって異なるため、最新の単価はAWS公式の料金ページでご確認ください。
試算イメージ(1TB・10TBの例)
・初回にオンプレミスから1TBをAmazon S3へ移行する場合:転送量課金がベースとなり、S3への書き込みリクエスト(PUT)料金が加算されます。ファイルサイズが小さいほどリクエスト件数が増え、リクエスト料金の比率が高くなる点に注意が必要です。
・初回に10TBを移行し、その後は差分を日次同期する場合:初回移行費用に加え、2回目以降は増分データ量分の転送料金と、同期のたびに発生するリスト・検証系のリクエスト料金が積み重なります。継続同期では「増分データ量」が費用を左右する主な変数になります。
具体的な金額感は、AWS公式サイトに掲載されているS3間コピーやオンプレミスからのFSx移行など複数パターンの試算例で確認できます。自社のデータ量・ファイル数・同期頻度を当てはめて試算することをおすすめします。
PoCでの費用感
PoCは数百GB〜数TB程度の小規模データで実施するケースが多く、本番移行に比べて転送量課金は小さく抑えられます。ただし、Enhanced modeはタスク実行ごとに料金が発生するため、PoCで何度もタスクを実行し直すと実行回数分の料金が積み上がる点は考慮しておく必要があります。
見積もりに必要な情報
概算費用を算出する際は、次の情報を事前に整理しておくと試算がスムーズです。
・初回移行データ量
・想定ファイル数(小さいファイルが多いほどリクエスト料金の影響が大きい)
・月間の増分データ量・同期頻度
・転送先ストレージ(S3のストレージクラス、EFS、FSxなど)
・Basic mode/Enhanced modeどちらを使うか
これらが整理できれば、AWS Pricing Calculatorや公式サイトの試算例を参考に概算費用を算出できます。
見落としやすい追加コスト
DataSync本体以外にも、関連サービスの費用が発生する場合があります。
- Amazon S3のリクエスト料金
- Amazon S3のストレージ料金
- CloudWatch・Logsの利用料金
- PrivateLinkの利用料金
- KMSのキー利用料金
見積もりでは、これらの周辺コストも含めて試算することが重要です。
見積もり時に確認したいポイント
見積もりを行う際は、次の項目を整理しておきましょう。
- 初回転送のデータ容量
- 月間の増分データ量
- 同期頻度
- 保存先ストレージ
- 周辺サービスの利用有無
また、現在の運用方法と比較することも重要です。
- rsync運用の工数
- 障害対応の負担
- 運用保守コスト
人件費も含めて比較すると、導入効果を説明しやすくなります。
コストが膨らみやすいパターン
想定以上の費用が発生しやすい例として、次のようなケースがあります。
- 同期頻度を高く設定する
- 不要なデータも転送する
- 検証処理を過剰に行う
- 保存容量が増え続ける
定期的に転送対象や同期設定を見直すことで、コストを抑えやすくなります。
導入前に確認すべきポイント
ネットワーク要件を確認する
DataSyncの導入前には、オンプレミスとAWS間のネットワーク要件を確認しておきましょう。
確認したい項目は次のとおりです。
- インターネット経由で接続するか
- VPNを利用するか
- Direct Connectを利用するか
- 求められるセキュリティレベル
特に大容量データを継続的に転送する場合は、帯域に余裕を持たせた回線設計が重要です。
権限設計を確認する
DataSyncを利用するには、IAMロールを用いた適切な権限設計が欠かせません。IAMロールとは、AWSのリソースに対する操作権限をまとめた設定のことです。
確認したい項目は次のとおりです。
- 転送先への読み書き権限
- KMSキーへのアクセス権限
- 必要最小限の権限範囲
- 定期的な権限の見直し
権限設計が不十分な場合、転送処理そのものが失敗する原因にもなります。
転送対象データを整理する
導入前には、実際に移行・同期する対象データの範囲を整理しておくことが重要です。
整理する際のポイントは次のとおりです。
- 不要なファイルを除外する
- 重複データを除外する
- 更新頻度で優先順位を付ける
- 重要度で優先順位を付ける
対象データの棚卸しは地味な作業ですが、後工程のトラブルを減らす効果があります。
DataSync採用判断フロー
ここまでの確認ポイントを整理すると、次の順序で導入可否を判断できます。
- 移行・同期の要件を整理する:オンライン移行かオフライン移行かを見極めます。
- ネットワークと権限の前提を確認する:接続方式とIAMロールの設計を先に固めます。
- 転送対象データを整理する:不要データを除外し、優先順位を付けます。
- PoCで実際の転送性能を検証する:本番導入前に小規模なPoCで動作を確認します。
この流れに沿って整理することで、DataSyncの採用可否と導入範囲を無理なく判断できます。

AWS DataSync導入の流れ
PoC前に確認する項目
本番導入の前に、PoCで転送性能や設定内容を検証しましょう。
事前に整理しておきたい項目は次のとおりです。
- 転送元・転送先を決める
- 接続方式を決める
- IAMロールを設計する
- PoC対象データを選ぶ
PoCでは、本番構成の一部を再現して検証することが重要です。
エージェント設定と環境準備
PoCや本番環境では、エージェントの配置とDataSyncの設定を行います。
主な作業は次のとおりです。
- エージェントを配置する
- Locationを作成する
- Taskを設定する
- 転送経路を確認する
あわせて、サーバー性能やネットワーク帯域も確認しておきましょう。
初回転送から増分同期までの進め方
DataSyncは、初回転送と継続同期を組み合わせて利用するのが一般的です。
導入の流れは次のとおりです。
- 初回のフル転送を実施する
- 差分データを継続同期する
- データ整合性を確認する
- 本番環境へ切り替える
段階的に移行することで、業務への影響を抑えやすくなります。
失敗しやすいポイントと回避策
ファイル属性やアクセス権で起きやすい問題
転送後に、ファイル属性やアクセス権が期待どおり引き継がれない場合があります。
事前に確認したい項目は次のとおりです。
- NFS属性を確認する
- SMB権限を確認する
- タイムスタンプを確認する
- テスト転送を実施する
本番前に検証することで、権限トラブルを防ぎやすくなります。
性能や転送時間で注意したいポイント
転送性能は、ネットワーク帯域やエージェント性能の影響を受けます。
確認したいポイントは次のとおりです。
- 回線帯域に余裕があるか
- 転送時間を試算したか
- 業務時間帯を避けるか
- 帯域制御を利用するか
本番移行では、余裕を持ったスケジュールを計画しましょう。
削除同期や上書き設定による事故
設定によっては、転送先のデータが削除される場合があります。
事前に確認すべき項目は次のとおりです。
- 削除同期を有効にするか
- 上書き条件は適切か
- テスト環境で確認したか
- レビューを実施したか
削除設定は、本番適用前に必ず検証しておきましょう。
運用時に押さえたい監視・セキュリティ
CloudWatchを活用した監視方法
継続同期を行う場合は、転送状況を監視できる環境を整備しましょう。
確認したい項目は次のとおりです。
- 転送失敗を検知する
- 転送量を監視する
- ログを保存する
- 通知先を設定する
異常時の対応手順も事前に決めておくと安心です。
セキュリティと継続運用のポイント
安全に運用するためには、設定や権限を定期的に見直すことが重要です。
主な確認ポイントは次のとおりです。
- KMSでデータを暗号化する
- Secrets Managerを活用する
- IAM権限を定期確認する
- 運用手順を文書化する
担当者が変わっても運用できる状態を目指しましょう。
AWS DataSyncでよくある質問
Q.rsyncやaws s3 syncとの違いは?
A.rsyncやaws s3 syncは、コマンドベースでの転送に用いられる手段ですが、検証や再実行、暗号化といった機能を個別に実装する必要があります。AWS DataSyncは、これらの機能をあらかじめ組み込んだマネージドサービスであり、運用の標準化に向いています。また、CloudWatchとの連携による監視のしやすさも、コマンドベースの手段にはない利点です。
Q.小規模な移行でも利用する価値はある?
A.小規模な移行であっても、継続的な同期が必要な場合や、検証機能を活用したい場合にはDataSyncの利用価値があります。一方、一度きりの単純なファイル転送であれば、他の手段のほうが手軽な場合もあります。移行の規模だけでなく、継続運用の有無を判断基準に加えるとよいでしょう。
Q.どこまで自動化できる?
A.初回のフル転送から増分同期まで、Taskの設定に沿って自動化できます。ただし、転送対象の整理や権限設計といった事前準備、削除同期の挙動確認などは、人手による判断が必要な部分です。自動化できる範囲と、人が判断すべき範囲を分けて理解しておくことが、安定運用につながります。
Q.Amazon S3・Amazon EFS・Amazon FSxはどう使い分ける?
A.Amazon S3はオブジェクトストレージとしてバックアップやデータレイク用途に向いています。Amazon EFSはファイル共有を必要とするアプリケーション用途に、Amazon FSxはWindows環境との親和性や高性能なファイルシステムが必要な用途に適しています。転送先の選定は、移行後にどのような用途でデータを利用するかに応じて判断してください。
テクノプロに相談できること
PoC・設計・移行計画・運用設計の支援内容
AWS DataSyncは、オンプレミスからAWSへの移行や継続同期を、運用負荷を抑えながら実現できるサービスです。
一方で、ネットワーク要件や権限設計、料金の見積もり、失敗しやすいポイントへの対策など、導入前に整理すべき事項は少なくありません。自社の移行・同期要件がDataSyncに適しているかを見極め、PoCを通じて転送性能や設定内容を検証することが、安全な本番導入への近道です。
テクノプロでは、PoCの実施から設計、移行計画の策定、導入後の運用設計まで、AWS DataSyncの導入を段階的に支援しています。移行・同期の進め方にお悩みの場合は、お気軽にテクノプロへご相談ください。
監修者

テクノプロ・ホールディングス株式会社
チーフマネージャー
中島 健治
2001年入社
ITエンジニアとして25年のキャリアを持ち、チーフマネージャーとしてテクノプロ・エンジニアリング社にて金融・商社・製造業など多業界でのインフラ基盤構築に従事してきた。2008年から2024年まで、オンプレミス環境でのストレージ・サーバ統合基盤の設計・構築を手掛け、特に生成AI・データ利活用分野のソリューション開発実績が評価されている。現在は技術知見を活かしたマーケティング戦略を推進している。


