AWSの運用自動化とは?自動化の方法や主なツール、サービスも解説

AWS運用

AWS運用の自動化は、クラウド環境を効率的に管理するための重要な戦略です。
本記事では、AWS環境における自動化の基本概念から、CloudFormation、Systems Manager、OpsWorksなどの主要ツールの活用方法まで、AWS運用の自動化に関する包括的な情報をご紹介します。AWSを導入検討中の企業や、より効率的な運用体制を構築したい担当者にとって、有益なガイドとなるでしょう。

AWS運用の自動化は、多くの企業にとって重要な課題ですが、専門知識や経験を持つ人材の確保が大きな障壁となることがあります。
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AWS運用の自動化とは?

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AWSにおける自動化とは?

AWS運用の自動化とは、AWSクラウド環境で実行される様々な運用タスクをプログラム的に制御し、手作業を排除または最小化するプロセスです。

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AWSは自動化を前提とした設計思想を持ち、多くのサービスやツールを提供しています。

AWSの自動化アプローチの特徴は、個々のサービスがAPI駆動である点です。すべてのAWSサービスはAPIを通じて操作できるため、プログラミング言語やコマンドラインツールを使って自動化スクリプトを作成できます。
また、AWS SDK(Software Development Kit)を利用することで、より複雑な自動化プロセスも実装可能です。

初めてAWS環境の自動化に取り組む場合、一度にすべてを自動化するのではなく、繰り返し実行される単純なタスクから始めることをおすすめします。段階的にスキルと知識を積み上げることで、より高度な自動化へと発展させることができます。

AWS環境における自動化は主に以下の領域で実現されます。

インフラストラクチャの自動化・IaC(Infrastructure as Code)と呼ばれるアプローチで、サーバーやネットワークなどのインフラリソースをコードとして管理
・CloudFormationやAWS CDKなどのツールを使用して、環境構築を自動化可能
デプロイメントの自動化・アプリケーションのビルド、テスト、デプロイを自動化するCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)パイプラインを構築
・CodePipelineやCodeBuildなどのサービスが支援
設定管理の自動化・Systems ManagerOpsWorksなどのサービスを利用して、複数のサーバーやリソースの設定を一貫して管理
監視と対応の自動化・CloudWatchのアラームやEventBridgeのイベントを基に、特定の状況で自動的にアクションを実行・例えば、パフォーマンスの問題を検知したら自動的にリソースをスケールアップするといった対応が可能
セキュリティ対応の自動化・Security HubGuardDutyなどのサービスと連携し、セキュリティ脅威の検出と対応を自動化

自動化の重要性と背景

クラウド環境での運用管理は、従来のオンプレミス環境と比較して柔軟性が高い反面、管理すべき対象が多岐にわたります。
AWS(Amazon Web Services)でのシステム運用においても、リソースの作成・設定・監視・更新といった作業が日々発生します。これらの作業を手作業で行うことは時間的コストが高く、人的ミスのリスクも伴います。

運用自動化とは、こうした日常的なタスクをプログラムやツールによって自動的に実行できるようにすることです。

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クラウド環境の普及に伴い、特に以下の理由から自動化の重要性が高まっています。

リソース管理の複雑化クラウドサービスの多様化により、管理対象が増加している
スピードの要求ビジネス環境の変化に素早く対応するための迅速なデプロイが求められる
コスト最適化無駄なリソースの検出と削減が競争力維持に不可欠
セキュリティ対応定期的なセキュリティパッチ適用や脆弱性対応を確実に実施する必要がある

AWSのようなクラウドプラットフォームでは、API(アプリケーションプログラミングインターフェース)を通じてあらゆる操作が可能なため、運用タスクの自動化に非常に適しています

AWS運用を自動化するための基本アプローチ

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ここでは、AWSの運用を自動化するための基本を解説します。

タスク自動化の基本概念

AWS運用の自動化を効果的に進めるためには、いくつかの基本概念を理解しておくことが重要です。
タスク自動化の基本概念は自動化の導入を成功させるための土台であり、これらを理解し適用することで、AWS環境における自動化の取り組みがより体系的かつ持続可能なものになります。

また、自動化は一度に完成させるものではなく、継続的に改善していくプロセスであることを念頭に置き、段階的にアプローチすると良いでしょう。

以下で、重要な概念を5点紹介します。

反復可能性(Repeatability)

自動化の対象となるべきタスクは、繰り返し実行される作業や一定のパターンに従う操作です。

例えば、以下のような作業が該当します。

●日次バックアップの取得
●リソースの定期的な起動・停止
●セキュリティチェック

これらの作業は予測可能なパターンがあるため、スクリプトやツールで自動化しやすい特性を持っています。

冪等性(べきとうせい、Idempotency)

冪等性とは、同じ操作を何度実行しても同じ結果になる性質を指します。

自動化スクリプトは、実行回数に関わらず一貫した結果をもたらすべきです。
例えば、「このサーバーの状態をXにする」という操作は、サーバーが既にX状態であっても、別の状態からでも、確実にX状態にすることが求められます。

宣言的アプローチ(Declarative Approach)

宣言的アプローチとは、「どのような状態にしたいか」を定義し、その状態に到達する方法はツールに任せるという考え方です。
例えば、「3台のウェブサーバーと1台のデータベースサーバーが必要」と宣言すれば、現在の状態から目標の状態へ自動的に調整されます。

CloudFormationなどのIaCツールは、この宣言的アプローチを採用しています。

パラメータ化(Parameterization)

自動化スクリプトやテンプレートは、環境や条件に応じて異なる設定値を指定できるように設計すべきです。

例えば、開発環境と本番環境で同じテンプレートを使用しながらも、スケールやセキュリティ設定を変更できるようにすることで、自動化の再利用性が高まります。

モジュール化(Modularity)

大きな自動化プロセスを小さな独立したモジュールに分割することで、メンテナンスや機能拡張が容易になります。各モジュールは特定の機能に特化し、組み合わせることで複雑な自動化フローの構築が可能です。

自動化を導入する際の検討事項

AWS環境で運用の自動化を進める際には、いくつかの重要な検討事項があります。
これらの考慮事項を事前に検討し、計画的に自動化を進めることで、長期的に持続可能な自動化基盤を構築することができます。

以下では検討すべき項目を7点解説します。

段階的アプローチの採用

すべての運用タスクを一度に自動化しようとするのではなく、優先度の高いタスクから段階的に自動化することがおすすめです。

例えば、頻繁に実行される単純なタスクや、ミスが発生しやすい作業から始めると効果が実感しやすくなります。
小さな成功の積み重ねによって、自動化への理解と支持も得やすくなります。

標準化とベストプラクティスの確立

自動化を進める前に、命名規則やタグ付けのルール、セキュリティ基準などの標準を定めておく必要があります。

AWS環境では、タグを活用したリソース管理が効果的です。
例えば、「環境(dev/stg/prod)」「部門」「コスト配分」などのタグを一貫して適用することで、後々の管理や自動化が格段に容易になります。

セキュリティ

自動化スクリプトやツールには適切なIAM(Identity and Access Management)権限を設定し、最小権限の原則に従うことが重要です。

また、自動化プロセスで使用する認証情報の安全な管理方法(Secrets ManagerやParameter Storeの活用など)も検討しておく必要があります。

テスト環境の整備

自動化スクリプトやテンプレートは、本番環境適用前にテスト環境で必ず検証すべきです。

AWS OrganizationsAWS Control Towerを導入することで、開発・テスト・本番といった複数のAWSアカウントを効率的に管理できます。

変更管理とバージョン管理

すべての自動化コードはGitなどのバージョン管理システムで管理し、変更履歴を追跡できるようにしましょう。

また、変更承認プロセスを整備し、自動化による変更がビジネスに与える影響を事前に評価する仕組みも必要です。

チームのスキルと知識

自動化ツールの選定や自動化アプローチの検討は、チームの現在のスキルセットや学習能力を踏まえて行うべきです。

例えば、チームがすでにPythonに精通しているなら、AWS SDK for Python (Boto3)を活用した自動化が適しているかもしれません。

メンテナンス負荷

自動化によって運用負荷が下がる一方で、自動化システム自体のメンテナンス負荷が発生することを認識しておきましょう。

特に、AWSサービスのアップデートに伴う自動化スクリプトの更新や、ビジネス要件の変化に応じた改修が必要になることがあります。

AWS運用の自動化は、多くの企業にとって重要な課題ですが、専門知識や経験を持つ人材の確保が大きな障壁となることがあります。
AWSの導入や運用、自動化は、国内25,000人以上(※1)の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績(※2)を持つ株式会社テクノプロにご相談ください。

※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロおよび(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点

主要なAWS自動化ツールの活用方法

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ここでは、AWSを自動化するための主なツールとその活用方法を解説します。

CloudFormationでインフラをコード化

CloudFormationは、AWSが提供するIaC(Infrastructure as Code)サービスであり、AWS環境の構築や変更を自動化するための有用なツールです。
CloudFormationを使うことで、インフラストラクチャをソースコードのように扱い、バージョン管理や再利用が可能になります。

CloudFormationの中心となるのはテンプレートです。
テンプレートとは、構築したいAWSリソースを記述したファイルで、JSONまたはYAML形式で作成します。

例えば、以下のようなテンプレートで、基本的なEC2インスタンスを定義できます。

Resources:
  MyEC2Instance:
    Type: AWS::EC2::Instance
    Properties:
      ImageId: ami-0abcdef1234567890
      InstanceType: t2.micro
      SecurityGroups:
        – !Ref WebServerSecurityGroup

このテンプレートをAWSコンソールまたはAWS CLIを通じてデプロイすると、指定したリソースが自動的に作成されます。
これをスタックと呼びます。スタックは、テンプレートで定義されたリソースの集合体で、一括して作成・更新・削除が可能です。

CloudFormationの大きなメリットは、一貫性と再現性です。
手動で環境を構築する場合、担当者によって設定が異なったり、手順が抜け落ちたりする可能性がありますが、CloudFormationを使えば常に同じ結果が得られます

また、本番環境と全く同じ構成のテスト環境を素早く作成することも容易になります。

初めてCloudFormationを使う場合は、AWS管理コンソールでテンプレートを作成・編集できるデザイナー機能を活用すると良いでしょう。視覚的にリソースを配置し、関連付けを行うことができます。
慣れてきたら、テキストエディタで直接テンプレートを編集することも可能です。

より高度な使い方として、パラメータを活用することで、同じテンプレートを異なる環境で使い回すこともできます。
また、スタックセット機能によって複数のAWSアカウントや地域にまたがってリソースをデプロイすることも可能です。

CloudFormationを導入する際の一般的なアプローチは、まず小規模な独立したリソース(セキュリティグループや単一のEC2インスタンスなど)からテンプレート化を始め、徐々に複雑なシステム全体へと拡大していきます。

すでに手動で構築したリソースがある場合は、CloudFormerFormer2などのサードパーティツールを活用して、既存のリソースからテンプレートを作成することも検討できます。

CloudFormationを活用することで、AWSインフラの管理が格段に効率化され、環境構築の自動化だけでなく、変更管理やコンプライアンスの面でも大きなメリットを得ることができます。

Systems Managerで運用タスクを簡素化

AWS Systems Manager(旧称EC2 Systems Manager)は、AWSリソース、特にEC2インスタンスやオンプレミスサーバーの運用管理を簡素化するための統合サービスです。

Systems Managerは複数の機能(これらを機能またはケイパビリティと呼びます)を提供しており、それぞれが運用タスクの自動化に役立ちます。

Systems Managerを活用する際には、まずSSM Agentというソフトウェアをサーバーにインストールする必要があります。最近のAMI(Amazon Machine Image)には標準で組み込まれていることが多いですが、オンプレミスサーバーやカスタムAMIを使用する場合は、手動でインストールする必要があるかもしれません。

以下で、Systems Managerの機能を解説します。

Run Command

Systems Managerの中核を成す機能の一つがRun Commandです。
Run Commandを用いることで、サーバーにSSHやRDPで接続することなく複数のインスタンスに対して同時にコマンドを実行できます。

例えば、セキュリティパッチの適用やソフトウェアのインストール、設定ファイルの更新などを一括して行えます。
Run Commandを使うことで、手作業による操作ミスが減少し、作業の一貫性が向上します。

Systems Managerの導入は、まずはRun Commandを使った単純なタスク自動化から始め、段階的に他の機能へと範囲を広げていくと良いでしょう。

Automation

より複雑な自動化シナリオには、Automation機能が適しています。
Automationでは、ランブックと呼ばれるドキュメントを作成し、複数のステップからなる自動化ワークフローを定義できます。

例えば、以下のような一連の流れを自動化できます。

EC2インスタンスを停止→AMIを作成→インスタンスを再起動

特に便利なのは、これらの操作にAWS APIコールが組み込まれているため、プログラミングの知識が少なくても複雑な自動化が実現できる点です。

State Manager

State Managerは、サーバーの設定状態を維持するための機能です。
特定の設定を定義し、その状態からの逸脱があった場合に自動的に修正するような仕組みを構築できます。

例えば、「特定のセキュリティ設定が常に適用されているべき」というルールを設定しておけば、何らかの理由で変更された場合に自動的に元の状態に戻します。

Patch Manage

Patch Managerは、サーバーのパッチ管理を自動化する機能です。
パッチベースラインを定義し、パッチ適用のスケジュールを設定することで、OSやアプリケーションの脆弱性対策を効率的に行えます。

特に多数のサーバーを管理する環境では、手動でのパッチ適用は現実的ではないため、この機能の価値は大きいでしょう。

Parameter Store

Parameter Storeは、設定データやシークレット情報を一元管理するためのサービスです。
アプリケーションの設定パラメータ、APIキー、パスワードなどを安全に保存し、必要に応じてアプリケーションやAutomationランブックから参照できます。

これにより、ハードコードされた認証情報の排除や、環境間での設定値の一貫した管理が可能になります。

OpsWorksによる継続的デプロイと構成管理

AWS OpsWorksは、ChefPuppetといった構成管理ツールを活用してアプリケーションのデプロイメントと構成管理を自動化するサービスです。
特に、レイヤー化されたアプリケーションスタックの管理に適しており、インフラストラクチャからアプリケーションコードまでを一括して自動化できます。

OpsWorksを導入する際には、まず小規模な環境から始め、チームがChefやPuppetのコンセプトに慣れてきたら徐々に範囲を拡大していくことをおすすめします。また、レシピやマニフェストはバージョン管理システムで管理し、変更履歴を追跡できるようにすることも重要です。

OpsWorksを活用することで、アプリケーションのデプロイメントと構成管理のプロセスが標準化され、環境間の一貫性が向上します。これにより、「開発環境では動くのに本番環境では動かない」といった問題を防止し、より安定したシステム運用が可能になります。

OpsWorksは主にOpsWorks StacksOpsWorks for Chef Automate(および以前はOpsWorks for Puppet Enterpriseも)の2つの形態で提供されています。
以下でそれぞれ解説します。

OpsWorks Stacks

OpsWorks Stacksでは、アプリケーションをスタックとして定義します。
スタックとは、互いに関連する一連のリソース(EC2インスタンスやRDSインスタンスなど)の集合体です。

スタック内のリソースはレイヤーによって論理的にグループ化されます。例えば、Webサーバーレイヤーとアプリケーションサーバーレイヤーというように分けることができます。

OpsWorks Stacksの自動化の仕組みはライフサイクルイベントに基づいています。
インスタンスが起動するとき、シャットダウンするとき、アプリケーションがデプロイされるときなど、特定のイベントが発生したときに実行するレシピ(Chefの場合)またはマニフェスト(Puppetの場合)を定義できます。

これにより、環境の一貫性を保ちながら柔軟な自動化が可能になり、例えば以下のような仕組みも簡単に構築できます。

●Webサーバーレイヤーのインスタンスが起動したときに自動的にApacheをインストールし、特定の設定を適用する
●新しいアプリケーションコードがリポジトリにプッシュされたときに、自動的にデプロイする

OpsWorks for Chef Automate

OpsWorks for Chef Automateは、フルマネージド型のChefサーバーを提供するサービスで、Chef Automateを自分で構築・管理することなくChefの強力な構成管理機能を活用できます。
ChefのDSL(ドメイン固有言語)を使ってインフラストラクチャをコード化し、様々な環境(開発、テスト、本番など)に一貫して適用できます。

OpsWorksの大きな利点は、冪等性のある構成管理です。
例えば、「このサーバーにはこのバージョンのパッケージがインストールされているべき」という状態を定義しておけば、その状態が維持されるように自動的に調整されます。

これにより、コンフィギュレーションドリフト(意図した設定からの逸脱)を防止できます。

まとめ

本記事では、AWS環境における自動化の基本概念から、CloudFormation、Systems Manager、OpsWorksなどの主要ツールの活用方法まで、AWS運用の自動化に関する包括的な情報について解説しました。

AWS運用の自動化は、多くの企業にとって重要な課題ですが、専門知識や経験を持つ人材の確保が大きな障壁となることがあります。
AWSの導入や運用、自動化は、国内25,000人以上(※1)の技術者を擁し、大手企業を中心に2,555社との取引実績(※2)を持つ株式会社テクノプロにご相談ください。

※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロおよび(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点

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