オンプレミスからAWSへの移行を検討しているものの、「本当に移行すべきなのか」「どこまで移すべきなのか」明確な判断ができずに悩んでいませんか。
保守切れ(EOS/EOL)やデータセンター見直しをきっかけに、オンプレからAWSへの移行が現実的な選択肢として浮上する一方で、移行方式・費用・リスク・社内説明の材料までを短期間で整理しなければならず、検討が止まってしまうケースは少なくありません。
移行する・しないを含めて、自社に合ったオンプレAWS移行方針を初期段階で整理するための考え方を紹介します。自社がオンプレミスからAWSへ移行する場合、何を判断すべきなのかを社内で説明できる状態になることを目指します。
オンプレミスからAWSへの移行に迷う際は、さまざまな業種業態のニーズに沿った多くの実績がある株式会社テクノプロへご相談ください。移行方式や費用の提案だけでなく、社内説明に必要な情報提供もサポートします。
テクノプロはAWSの構築から運用まで幅広く支援しています
この記事で分かること
- オンプレからAWS移行を検討すべき背景と、判断を急ぎすぎないための考え方
- 自社システムに合ったオンプレAWS移行方針を考えるための、初期判断の軸
- 移行する・しないを含めて、次に取るべきアクションの整理方法
具体的な移行方法を検討する前に、まずは「なぜ検討するのか」「何を判断すべきなのか」を整理することが重要です。ここからは、その考え方を順に整理していきます。
オンプレからAWS移行を検討する企業が最初に整理すべきこと

【この章で分かること】
・AWS移行が検討される代表的な背景(EOS/EOL・BCP・運用負荷など)
・目的と対象範囲を先に決める理由(「全部移す前提」の落とし穴)
オンプレからAWS移行を考え始めたとき、最初に整理すべきなのは移行手順ではなく検討背景です。この前提が曖昧なまま進めると、後工程で判断がぶれやすくなります。
オンプレ移行が検討される主な背景
これまで多くの企業でオンプレ移行が検討されてきた主な背景には、老朽化・EOS/EOL・BCP(事業継続計画)・運用負荷があります。
EOS/EOL(End of Support / End of Life)とは、OSやミドルウェア、ハードウェアに対するメーカー保守が終了する時期を指します。典型的なシナリオとしては、次のようなものがあります。
- 基盤OSとDBのEOS/EOLが同時期に到来
- データセンター契約更新と更改時期が重なる
- 災害対策・BCP見直しと老朽化対応が重なる
総務省の情報通信白書でも、企業のクラウド利用が広がっていることが示されています。
業種別に見ると、たとえば次のように背景の違いが移行方針へ影響します。
- 製造業:基幹更新と工場システム連携の同時検討
- 流通業:拠点統廃合とBCP強化
「背景の違い=移行方針が変わる」という前提を押さえることが、初期判断の出発点になります。

移行の目的と対象範囲を先に決める理由
よくある失敗は、「AWSに移行すること」自体が目的になってしまうケースです。たとえば、次のような進め方は移行後に課題が顕在化しやすくなります。
- 「全部AWSに移す前提」で検討が進む
- 業務影響や運用体制を十分に整理しないまま判断する
初期段階では、次の2点を先に決めることが重要です。
- 何を解決したいのか(更改期限、BCP、運用負荷、コスト等)
- どこまでを対象にするのか(全体/一部/周辺のみ等)
実際には、基幹系はオンプレ維持、周辺系(バッチ/帳票/連携)から段階的にAWS移行という判断も一般的です。移行は「全部かゼロか」ではありません。
オンプレからAWS移行の進め方3ステップ
【この章で分かること】
・移行検討を進める「考える順番」(Assess→Mobilize→Migrate)
・各フェーズで最低限押さえるポイント(詳細手順ではなく全体像)
AWS移行の進め方は考える順番3ステップで整理します。Assessで現状と依存関係を整理、Mobilizeで体制・前提を固め、Migrateで移行・切替と運用最適化まで進めましょう。

Assess|現状棚卸しと初期判断
Assessでは、主に以下を整理します。
- システム構成と依存関係
- 停止許容時間
- 概算レベルの費用対効果
ここでは精緻な見積は不要です。方向性を判断するための材料を揃えることが目的です。
Mobilize|移行計画と準備の整理
次に、進め方を整理します。
- 内製/外部支援の切り分け
- ネットワーク・セキュリティ前提
この段階で方針が曖昧だと、検討が停滞しやすくなります。
Migrate|移行実行と移行後を見据える
移行時にはテストや切替だけでなく、移行後の運用・コスト管理まで見据える視点が不可欠です。「移行して終わり」にならないよう、運用の持ち方・監視・権限・コスト管理の前提も合わせて整理します。
7RでAWS移行パターンの全体像を整理する
【この章で分かること】
・「AWSの移行を判断するチェック項目」として使う7Rの考え方
・移行する/しない(Retain/Retire)も含めた選択肢の整理方法
AWS移行には複数のパターンがあります。移行方式を「正解探し」にせず、まずは7Rを判断軸として選択肢を整理することが重要です。
7RとはAWS移行の意思決定をするフレームワーク
7Rとは、AWS移行の意思決定をする際に選択肢を漏れなく並べるための枠組みです。Rehost / Replatform / Refactor だけでなく、Retain(残す)/ Retire(廃止する)も含みます。
重要なのは、「移行しない」という判断も合理的である点です。
7Rは、移行方式を“技術の種類”として覚えるためではなく、「このシステムは、いつまでに/どこまで変えられて/どの程度のリスクを許容できるか」という条件に合わせて、取り得る方針を漏れなく並べるためのフレームです。具体的には次の順で考えると、初期判断が進みやすくなります。
| パターン | 概要(要点) | 初期判断での見方 |
| Rehost | そのままの構成を単純に移行 | 期間優先・改修最小 |
| Repurchase | オンプレミスから必要部分を置き換え | 独自開発のオンプレミスからAWSやSaaSに置き換える |
| Replatform | 部分的に最小限のクラウド最適化 | 負荷を軽減し運用改善も狙う |
| Relocate | VMware Cloud on AWSに移行 | これまでの管理ツールや設定の継続利用も可能 |
| Refactor | 全面刷新し改修・作り替え | 将来拡張・刷新志向 |
| Retain | オンプレミス運用を現状維持 | 制約が大きい場合 |
| Retire | 使われていないシステム・機能を廃止 | 不要コストの削減・統廃合対象 |
自社に合ったオンプレAWS移行パターンの選び方
【この章で分かること】
・停止許容・改修可否・依存関係・運用体制からの初期判断の型
・段階移行/オンプレ維持が向くケースの見分け方
移行パターンを理解しても、「自社ではどれが合うのか」で判断が止まるケースは少なくありません。ここでは初期判断に使える軸に絞って整理します。
停止許容時間・改修可否・依存関係・運用体制で考える
初期判断に有効な観点は以下です。
- 業務停止をどこまで許容できるか
- アプリ改修が可能か
- 他システムとの依存関係
- 運用体制を変えられるか
よくある構成として、基幹DB+周辺バッチのようなオンプレ構成では、一部機能から段階移行する企業も多く見られます。
一般的には、移行対象を全体の30〜40%に抑えることで初期リスクを軽減できたという傾向もあります(あくまで一般的な傾向)。
段階移行が向くケースと、オンプレ維持が向くケース
一部ログ出力やファイル連携のみを先行移行するなど、段階移行は現実的な選択肢です。
移行は二者択一ではありません。「残す」「段階的に移す」「まとめて移す」を組み合わせて設計するのが現実的です。
| チェック項目 | Yes | No |
|---|---|---|
| ☑業務停止を数時間許容できる | ||
| ☑アプリ改修が可能 | ||
| ☑システム依存が少ない | ||
| ☑運用体制を変更できる |
※Yesが多いほどAWS移行に向いている傾向
※最終判断には業務・コストの検討が必要
オンプレからAWS移行の費用はどう考えるべきか
【この章で分かること】
・費用を「初期/移行/運用」に分けて整理する方法
・TCO/ROIを“概算”で社内説明に使うときのポイント
AWS移行の費用は、単純な金額比較では判断できません。初期段階では、費用の「精緻さ」よりも、社内で合意できる見方(枠組み)を作ることが重要です。
初期費用・移行費用・運用費の分け方
費用は大きく分けて以下です。
- 初期構築費
- 移行作業費
- 移行後の運用費
一般的には、オンプレの更改・保守費用と比較し、3〜5年スパンで20〜30%程度のTCO削減が見込まれるケースもあります。
TCO / ROIを社内説明に使うときの見方
TCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)や ROI(Return On Investment:投資利益率) は、精緻さよりも前提条件の共有が重要です。稟議では「考え方」が重視されます。
まずは「どの費用を含めるか」「どの期間で見るか」を揃えることで、議論が進みやすくなります。
オンプレからAWS移行時に考慮すべき課題と失敗しやすいポイント
【この章で分かること】
・失敗が起きやすい論点(ダウンタイム/責任分界/運用・コスト)
・初期段階で決めておくと「後戻り」を防げるポイント
失敗の多くは、移行作業そのものではなく事前の想定不足に起因します。ダウンタイムやデータ整合性、責任分界、移行後運用までを早期に洗い出し、社内合意の前提を揃えることが重要です。
ダウンタイム・データ整合性・切替リスク
夜間・休日対応には限界があります。業務影響を過小評価しないことが重要です。停止許容時間や切替手順の検討を後回しにすると、移行計画そのものが成立しなくなる場合があります。
検討不足になりやすい論点(チェックリスト)
- 停止許容時間(RTO):復旧までに許される停止時間
- 許容損失(RPO):失ってよいデータ量=どこまで巻き戻し可能か
- 切替方式:一括切替か、段階切替か(並行稼働・二重書き込みの要否)
- 外部連携:取引先・SaaS・他拠点との接続先は何か
- 検証範囲:結合テスト/リハーサル/ロールバック(戻し)手順を含めるか
失敗しやすいパターン
- 「停止は短いはず」と見積もって業務影響の合意が取れていない
- 切替当日に想定外の依存関係(バッチ、共有ファイル、外部IF)が発覚する
- ロールバック手順が曖昧で、トラブル時に戻れない(戻したら整合が崩れる)
初期段階で最低限決めておくと前に進む項目
- 業務影響を説明できる「停止の上限(RTO)」
- データ整合性の方針(整合優先か、停止最小化優先か)
- 切替方式の大枠(一括/段階、並行期間の有無)
- リハーサル回数と、最終判定の責任者(Go/No-Go)
セキュリティ・コンプライアンス・責任分界
AWSの責任共有モデルとは、AWSが守る範囲と利用者が守る範囲(設定・権限・データ等)を分けて考える枠組みです。AWS公式でも説明されています。
社内説明では「AWSが全部やってくれる」と誤解されがちなので、責任分界を前提に運用設計を行う必要があります。
誤解が起きやすいポイント
- AWSが担うのは「クラウド基盤のセキュリティ(物理・基盤)」
- 利用者が担うのは「OS設定、アプリ、ID管理、データ保護」
- 「クラウド=自動で安全」ではなく、設計と運用の責任は残る
- 監査・規程・個人情報などは、技術対策だけでなく運用ルールの整備が必要
初期検討で押さえる観点
- データ分類:機密/個人情報/重要業務データはどれか
- アクセス制御:誰が何にアクセスするか(権限設計、特権ID、承認フロー)
- ログ/監査:何を、どの期間、誰が見るか(監査要件への対応)
- 暗号化方針:保存時/通信時の暗号化、鍵の管理方針
- ネットワーク境界:閉域/VPN/インターネット経由など、前提の整理
- 運用責任:障害対応、パッチ適用、設定変更の責任者と手順
「責任分界」を短く説明するテンプレ
- AWS:クラウド基盤(設備・基盤サービス)の安全確保
- 利用者:設定・権限・データ・アプリなど“使い方”の安全確保
移行後の運用・コスト管理
「運用が自動的に楽になる」わけではありません。設計段階から運用を前提に考える必要があります。
特に、監視・権限・バックアップ・コスト最適化などは、移行後に継続して効いてくる論点です。
移行後に“想定外”になりやすい運用項目
- 監視:何を正常とし、どの閾値でアラートを上げるか(通知先・当番体制含む)
- バックアップ/復旧:取得頻度、保管期間、復旧手順(実際に戻せるかの訓練)
- 変更管理:設定変更の承認・記録・ロールバック手順
- 権限運用:入退社・異動・委託先の権限変更、特権操作の統制
- パッチ/脆弱性対応:どこまで自動化し、どこを人が判断するか
- 運用窓口:問い合わせ対応・障害一次切り分け・エスカレーション
コストが想定より増えやすいポイント(初期に決めると効く)
- コスト配賦:部門/システム別に把握できるようにする(責任の所在が明確になる)
- 利用ルール:不要リソースの棚卸し頻度、停止・削除ルール
- ピーク対策:繁忙期・夜間バッチなど、負荷変動の扱い(過剰スペックを防ぐ)
- 継続改善:月次で「増えた理由」を説明できる仕組み(見える化→改善)
初期判断で最低限決めると“移行後に揉めない”項目
- 運用の責任分担(情シス/開発/ベンダーの役割)
- 監視・バックアップ・権限の運用ルール(誰が、いつ、何をするか)
- コスト管理の粒度(全体だけか、部門別・プロジェクト別まで見るか)
オンプレからAWS移行でよくある質問
Q1.まずは一部システムだけ移行できますか?
A.段階移行は一般的な進め方です。
Q2.内製と外部支援はどう分担すべきですか?
A.体制・経験により最適解は異なります。初期判断(棚卸し・依存関係・停止許容・体制)だけ外部を活用するケースもあります。
Q3.どのシステムはオンプレに残す判断が多いですか?
A.制約次第で残す判断も珍しくありません。移行しない方が合理的なケースもあるため、7Rの観点で整理するのが有効です。
まとめ
オンプレAWS移行は、単なるサーバー移設ではなく経営・運用判断の要素を含みます。
本記事で整理したように、オンプレからAWS移行では「移行するか」「どこまで移行するか」を初期段階で整理することが重要です。
オンプレミス環境をAWSへ移行する際の進め方や移行パターンで悩む担当者から、テクノプロには多くの相談が寄せられています。私たち株式会社テクノプロは、導入初期の管理設計整理、権限・運用ルール設計、社内説明用の整理(FAQ化・判断軸の明文化)まで、判断段階から伴走します。
「いきなり詳細設計や構築を依頼するほどではないが、この進め方で問題ないかを整理したい」という段階からでも、まずはご相談ください。
※1:2024年6月末時点
※2:(株)テクノプロ及び(株)テクノプロ・コンストラクション 2024年6月末時点

監修者

テクノプロ・ホールディングス株式会社
チーフマネージャー
中島 健治
2001年入社
ITエンジニアとして25年のキャリアを持ち、チーフマネージャーとしてテクノプロ・エンジニアリング社にて金融・商社・製造業など多業界でのインフラ基盤構築に従事してきた。2008年から2024年まで、オンプレミス環境でのストレージ・サーバ統合基盤の設計・構築を手掛け、特に生成AI・データ利活用分野のソリューション開発実績が評価されている。現在は技術知見を活かしたマーケティング戦略を推進している。


